歴代『DXレポート』を改めて読み解く。なぜ緊急かつ重要なのか?なぜ誤解が生まれるのか?「DXレポート」が示す真のDXのあり方とは何か(写真はイメージです) Photo:PIXTA

経済産業省が2018年に公表し、“DXブーム”ともいうべき状況を巻き起こした「DXレポート」。その後も続編にあたる「DXレポート2」、追補版である「DXレポート2.1」「2.2」が公開されている。これらのレポートが示す真のDXのあり方、そして「デジタル産業への変革」とは何か。各レポートの内容を改めて読み解き、DX化を進める企業経営者に成功へのヒントを与える。(編集・ライター ムコハタワカコ)

「競争力維持・強化のため」
初代レポートで掲げられたDXの必要性

 経済産業省が『DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』(初代レポート)を公開してから4年半、続編にあたる『DXレポート2(中間取りまとめ)』を公表してから2年あまりがたつ。そもそもなぜ、日本企業にDXが求められているのか。

 初代レポートの冒頭には、「あらゆる産業において、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネス・モデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起きつつある。こうした中で、各企業は、競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことが求められている」との記載がある。

 つまり「DXを早く進めないと、企業はこれからの競争で負けてしまうぞ」と中央省庁発行のレポートがくぎを刺しているわけだ。

 新しいビジネスモデルの構築やデータを活用したスムーズな意思決定、オンライン・オフライン両面での顧客体験の向上には、デジタル技術の活用が欠かせない。米国の事例を見てみよう。

 書籍のインターネット通販から出発したAmazonは、ECサイトの物流・決済の仕組みを外部の通販業者にも提供することで事業を拡大し、現在ではそのサーバー運用のノウハウを活かしたクラウドサービスのAWSが利益の源となっている。

 動画配信サービスのNetflixはDVDレンタルの会社として創業したが、2007年にストリーミングサービスを開始。レンタル事業は段階的に縮小し、2011年には完全に終了した。その後、動画配信サービスに注力することで成長を続け、現在は世界中で6億人近い視聴者数と2億人以上の有料会員数を抱えるサービスとなっている。