デジタル技術によってビジネスを変革する、デジタルトランスフォーメーション(DX)。日本企業はなぜ今、DXを進めなければならないのか。『いちばんやさしいDXの教本 人気講師が教えるビジネスを変革する攻めのIT戦略』著者の亀田重幸氏(ディップ dip Robotics室長)に、企業がDXを進めるべき理由と実際の進め方、そしてDXの本質とは何かを、改めてわかりやすく解説してもらう。(取材・文・撮影/ムコハタワカコ)
「2025年の崖」から「コロナ禍」へ
DXが求められる理由の変化
2018年、経済産業省が「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」を公開して以来、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は日本企業にとって急務と言われてきた。
DXレポートの公開後、経産省は2020年に「DXレポート2」、2021年に「DXレポート2.1」、2022年には「DXレポート2.2」と改訂版・追補版を続々と公開。昨年のDXレポート2.2では「DX推進の取り組みは着実に前進している、と言える」としながらも、その内容が効率化中心に終わっていて、サービス創造や革新にはなかなか至っていないとの指摘もされている。
そもそも、なぜDXは“急務”とされるのか。
『いちばんやさしいDXの教本 人気講師が教えるビジネスを変革する攻めのIT戦略』(インプレス)の著者でディップ dip Robotics室長の亀田重幸氏はまず、最初のレポートが公開された時点での日本の状況について、「当時は、社内基幹システムの保守期限などの問題から、既存システムを刷新する必要性があった」と説明する。
レガシーシステムが抱える老朽化・複雑化・ブラックボックス化などの問題がDX推進の妨げとなるため、2025年までにシステム刷新を集中的に進める必要がある。それを端的に示したのが「2025年の崖」という言葉だったわけだ。
だがその後「時代が変わった」(亀田氏)。DXレポート2が公開されたのは、折しも新型コロナウイルスの感染拡大の年のことだ。