倒産のイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

コロナ禍で実施された雇用調整助成金(雇調金)の特例措置が今年3月末で終了した。2020年4月分から適用が始まり、厚生労働省の支給決定件数は延べ791万件超、支給総額(速報値)は6兆3507億円に上る。コロナ禍で窮地に立たされた外食やサービス、観光、交通インフラなどを中心に活用が広がった。だが、経済活動の活発化する今、空前の人手不足と賃上げが加速している。莫大な資金でコロナ禍の雇用を支えた雇調金だったが、アフターコロナがその効果をあっさりと覆そうとしている。(東京商工リサーチ情報部 二木章吉)

上場企業の5社に1社が
雇調金の特例措置を活用

 コロナ禍で雇調金の特例措置を活用した上場企業は全体(3916社)の21.9%に当たる861社で、支給総額は9226億1244万円だった(3月7日までの開示資料時点)。

 上場企業の5社に1社が活用し、計16社で3年間の計上額が100億円を超えた。このうち、半数を超える9社が航空会社や鉄道会社などの運送関連で、ここに外出自粛、渡航禁止による影響の長期化、規模の大きさが表れている。

 コロナ禍が拡大した2020年4月以降、全国で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令が相次ぎ、2022年3月、ようやくまん延防止等重点措置が解除されると外食や観光などに客足が戻り、打撃を受けた業種でも雇調金の申請は減少した。

 だが、その一方で、未上場企業を含めた雇調金の不正受給が各地で摘発されるようになった。厚生労働省と都道府県労働局は不正受給への対応を強化し、不正受給した企業には助成金の返還を求めると同時に、企業名の公表を進めている。

 コロナ禍で雇用維持に効果を発揮した雇調金は、主な財源を企業が負担する雇用保険の保険料に依存している。その受給使途には監視強化と検証は当然のことだろう。