インタビューのイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

上司の指示通りにやったつもりでも、「それ、指示と違うよ」と怒られてしまう。そんな人は、聴き方にひと工夫ほどこせば、改善されるかもしれません。苦手な上司の指示も上手に受ける方法について、元大手出版社勤務で1000人もの著名人のインタビュー経験を持つ船見敏子氏の著書『3ステップで職場の理不尽から自分を守る 言い返せない人の聴き方・伝え方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・編集してお送りします

「伝え返し」で誤解を防ぎ
話を深掘りする

 うなずきやあいづちに加えて聴き上手な人がしているのが、「伝え返し」です。相手が言ったことばをそのままそっくり伝え返すスキルです。

 レストランで料理を注文すると、店員さんが注文を伝え返してくれますね。それを聞くと、ちゃんと注文が通ったと安心します。ところが、店員さんが注文を伝え返さずに行ってしまったら、不安になりませんか。

「伝え返し」は、「私はあなたのことばをしっかり受け取りました」という合図になります。相手を安心させる効果があるのです。

 会話でストレスを感じる要因は、互いの心のフィルターが違うことによるすれ違いです。すれ違うことによって誤解が生じ、人間関係に亀裂が入ったり、仕事でトラブルが発生することもあります。「伝え返し」には、こうした誤解を防ぐ効果もあるのです。

 例えば、「机の上、ちゃんと片付けてよ」と上司に怒られたとします。こういった漠然とした指示や注意をする人は意外と多いものですが、「ちゃんと片付ける」ことがどういった状態を指しているのかは不明瞭です。

 しかし、怖い上司から高圧的に言われると、委縮してしまって「はい」としか答えられない人もいます。結果、自分なりに解釈をして、机の上にあるものをすべて撤去するという行為に及んだりします。

 ところがそれは、上司が求める状態とは違っていた、なんていうことがありますよね。そしてまた怒られる。確認せず誤解をし、求められることと違うことをしてしまい、さらに関係性が悪くなる。

 そんな悪循環に陥るのは、時間と労力の無駄遣いです。

「伝え返し」は
再考のきっかけになる

 このように、誤解やすれ違いが原因でトラブルが起きることは少なくありません。あなたがこれまで怒られたり、攻撃されたりしてきたシーンを思い出してみてください。思い当たることはありませんか。

 このようなトラブルは、「伝え返し」を習慣にして、相手が何を言わんとしているかを正確に聴き取ることで防ぐことができます。

「ちゃんと片付けてよ」と言われたら、「ちゃんと片付ける、ですね」と伝え返します。すると上司は「ちゃんと」の意味を改めて考え、「机の右上にどさっと書類が山積みになっているだろう。あの状態じゃあ、何がどこにあるかわからない。お客様別に書類を分けて、ボックスに入れたらすっきりするだろう」と言うかもしれません。