給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。

金融資産を多く保有する会社のバリュエーション(価値算定)の方法とは?Photo: Adobe Stock

純金融資産を加味したバリュエーションの計算式

 事業に使わない余剰資産をたくさんため込んでいるケースでは、その会社の株主価値(発行済み株式を合計した価値)は下図のように、

「株主価値=税引き後営業利益×妥当なPER+金融資産-有利子負債」

と考えることができます。

 税引き後営業利益というのは、営業利益から税金を引いた後に残る利益です。日本の法人の税率は約30%なので日本企業のほとんどでは「税引き後の営業利益≒営業利益× 0・7」と考えていいでしょう。これが会社の事業価値と考えられます。

 ただし、税率が異なる海外での収益が多い会社の場合には、掛け目を0・7以外の比率にした方がいいケースもあります。

金融資産とは、現金・預金、
有価証券、投資有価証券などの合計金額

 ここで経常利益や純利益を使わないのは、これらの利益には非事業資産からの収益(配当や金利など)が入ってしまうからです。非事業資産からの収益も考えた事業価値を計算し、さらに非事業資産も加えてしまうと、2重にカウントすることになってしまいます。

 金融資産とは、現金・預金、有価証券、投資有価証券などの合計金額です。そこから有利子負債を差し引いたものが純金融資産(非事業価値)です。

 金融資産以外でも事業に使用していない不動産などがあれば、それを含めて「非事業価値=余剰資産-有利子負債」と考えることもできます。

小泉秀希(こいずみ・ひでき)
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/