給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊される。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。

【投資のプロに聞く(3)】株で資産をつくる人に共通する、最強の力とはPhoto: Adobe Stock

利益確定の売りや損切りが多い人は、
大きく資産を増やすことはできない

――小泉秀希(以下、小泉) 本当に良い株を見つけられても、それを持ち続けるのはなかなか難しいです。ある程度値上がりすると売りたくなりますし、逆に値下がりしても売りたくなりますが…。

藤野英人(以下、藤野) 株式投資の世界ではよく「握力」ということが言われますが、本当に良いと思える銘柄を見つけて投資できたら、あとは株を保有し続ける力というのがとても大事になります。

【投資のプロに聞く(3)】株で資産をつくる人に共通する、最強の力とは「ひふみ投信」創始者 レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長・最高投資責任者(CIO)藤野英人さん
野村投資顧問(現:野村アセットマネジメント)、ジャーディンフレミング(現:JPモルガン・アセット・マネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアを持つ。投資信託「ひふみ」シリーズ最高投資責任者。投資啓発活動にも注力する。東京理科大学上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師。一般社団法人投資信託協会理事。 主な著書に『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『プロ投資家の先の先を読む思考法』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

 よく、「利確(りかく:利益確定の売り)や損切り(そんぎり:損失確定の売り)が大事」と言われることがあります。それは1つの考え方として間違いではありません。

 しかし、利確や損切りという言葉をよく口にする人で、大金持ちになった人をあまり見たことがありません。

 どうしてかというと、利確は大きく値上がりする手前で売ってしまうことになるからです。10倍になるような株を見つけて投資して、その成果を得るには2倍や3倍になっても、さらに保有し続ける握力が必要です。

 この握力をつけるためには、株を複数単位で買って、その株が上がってどうしても売りたくなったら一部を売却するという風にするといいと思います。

 株価が上がれば売りたくなるのが人情だし、売らずに下がってしまったら後悔するのも人情です。そういう風に株価が上下動する中で株を保有し続けるのは大変なことです。そうした心理とうまく付き合うためにも、一部は持ち続けて、一部は売り買いする、というような工夫も大事です。

株で資産をつくるコツは、成長株への長期投資

――小泉 投資家としては5年後、10年後と将来のことを予測することも大事だと思いますが、将来予測はどのようにしたらうまくできますか?

藤野 5年ぐらいの予測が一番外れやすいです。経済状況や世界情勢が変化するからです。最近の例でも、パンデミックやウクライナの戦争などで経済状況が大きく変わってしまった。数年くらいの期間だと、そういう経済状況に振り回されてしまうことになります。

 しかし、10年以上の期間になるとかえって予測しやすいのです。たとえば、この2年間ぐらい(2020~2022年)で動画コンテンツの利用が爆発的に増えましたが、それは4Gの通信網が完成したからです。通信規格はだいたい10年に1度規格変更があり、2024年くらいには5Gが普及して今よりさらに大容量のデータが瞬間的に移動できるようになるので、それでまたいろんなことが劇的に変化するはずです。

 そして、その後には6Gも出てくる。こういう10年単位の変化はかなり確実に予測できますし、それに向けて準備している会社がいて、そうした中から大きく伸びる会社が出てきます。

 このように、今後も爆発的に伸びるような会社というのは山のように出てきますが、それによって個別株投資で大きなリターンを得ることができるのです。

 こういう投資なら、戦争やパンデミックや原油高騰や円高・円安に振り回されずにできます。むしろ、そういう短期的な出来事で株価が下落すれば投資チャンスが広がります。

 なぜ長期目線が大事なのかというと、より長期で見たほうが短期的な株価の動きとか、業績の動きとかにとらわれないで、深く大きく儲ける会社を選べるからです。

小泉秀希(こいずみ・ひでき)
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。
マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/