「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれないのです。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。
粗食・少食では認知症と戦えない
【前回】からの続き 食事に関して、あらためて私から注意喚起したいのは、「高齢者は粗食・少食でいい」という考え方では気力が養えず、認知症とは到底戦えないということです。
慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターの新井康通教授らが、日本の100歳以上の「百寿者」を調べた研究では、百寿者にはしっかり食べて栄養素をまんべんなくとる人が多く、体重1kgあたりの摂取カロリーは平均30kcalで成人と同レベルだったそうです。
認知症を防ぐ栄養源とは?
なかでも増やしてほしいのが、たんぱく質の摂取。認知症リスクと戦う高齢者の補気に欠かせないのは、たんぱく質なのです。
百寿者の血液を調べてみると、たんぱく質の摂取量と相関する「アルブミン」の値が高いという特徴があります。
健康の要(かなめ)は“たんぱく質”
脳も筋肉も血管も、身体をつくっているのは、たんぱく質です。
血液内で酸素を運んでいる成分(ヘモグロビン)も、新型コロナなどのウイルスと戦ってくれる抗体(免疫グロブリン)も、たんぱく質からつくられています。
たんぱく質不足に陥ると…
たんぱく質のことをもう少し詳しく説明すると、たんぱく質は20種類の「アミノ酸」からなります。そのうち9種類は、体内で合成できない「必須アミノ酸」ですから、食事から積極的にとるようにします。
たんぱく質が足りないと、必須アミノ酸を得るために、身体が少しずつ壊れてしまいます。それは、タコが自分の足を食べてしまうのと同じような振る舞いともいえるのです。【次回に続く】
※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。