インフレ・円安の時代に入った今、資産を預金だけで持つことはリスクがあり、おすすめできない。「先行き不透明な時代」には、これまで投資に無縁だった人も資産を守り・育てるために資産運用を始める必要がある。このままではあなたの現金の価値が下がる! インフレ・円安からお金を守る最強の投資』(朝倉智也著、ダイヤモンド社)が発売された。本書は、投信業界のご意見番が新しい時代を乗り切る「究極の運用法」をアドバイスするお金の入門書だ。大切なお金を守り増やすためには、どうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。

【投資のプロが教える】債券ファンドへの一括投資と積立投資では、どちらがおすすめか?Photo: Adobe Stock

債券ファンドは、資産を守るために活用する

 次にご覧いただきたいのが、下図です。これは世界の先進国債券で運用する「eMAXIS Slim 先進国債券インデックス」というファンドに一括投資した場合と、積み立て投資をした場合を比較したグラフです。

 このファンドは2017年2月に設定されたものなので、設定時から2022年10月まで69ヵ月のグラフを示しています。

 ご覧いただければわかるように、一括投資をした場合、投資元本69万円を下回ることは一度もなく、2022年10月には85万円まで増えています

 一方、積み立て投資をした場合も投資元本を下回ることはなく、2022年10月には77万円まで増えています

 株式と違って、債券は値動きが小さい資産です。このため、積み立て投資の「値下がりしたときに量を多く買える」というメリットは享受しにくいと言っていいでしょう。

 そもそも本書で提案する資産管理の場面では、債券ファンドは「資産を守る」ために活用するものです。再三ご説明しているように、資産形成層、資産活用層に共通する課題として、「預金だけでは資産の価値が目減りしてしまう」というリスクがあります。

 世界の債券に投資するファンドで運用することは、まさにこのインフレリスクに備えること、そして通貨の分散を図ることにより、円安のリスクにも備えることが目的となります。

 もちろん、リスクをできるだけ抑えるという観点で債券ファンドも積み立てで投資するという選択肢もありますが、「いま預金で持っている資産を守るために債券ファンドに移す」という場面を考えると、私は債券ファンドであれば一括で投資してもよいのではないかと思います。

 ちなみに、先ほど「投資のタイミングを見極めるのは困難だ」ということをご説明しましたが、債券投資を始めるのに向くタイミングについては、景気循環からある程度予測することができます。次にそれについて説明します。

(※本稿は『インフレ・円安からお金を守る最強の投資』の一部を抜粋・編集したものです)

朝倉智也(あさくら・ともや)
SBIグローバルアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、1995年米国イリノイ大学経営学修士号(MBA)取得。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。1998年モーニングスター株式会社(現 SBIグローバルアセットマネジメント株式会社)設立に参画し、以来、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。SBIホールディングス株式会社 取締役副社長を兼務し、SBIグループ全体の資産運用事業を管掌する。主な著書に『全面改訂 投資信託選びでいちばん知りたいこと』『改訂新版 ETFはこの7本を買いなさい』『一生モノのファイナンス入門』(以上、ダイヤモンド社)、『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『お金の未来年表』(SB新書)などがある。