2023年度、主要企業の中途採用の比率が過去最高の37.6%まで高まった。背景には、新卒一括採用と年功序列型評価、終身雇用といった硬直的な雇用慣行が限界を迎えていることがある。人口減少で技術やノウハウを次世代に継承することが難しくなっているのに加え、人手不足に拍車がかかっている業種もある。中途採用の増加で従来の雇用慣行が打破されることは、中長期的には良い影響を与える。23年の春闘で賃上げを表明する企業が増えた背景にも、個人のチャレンジやその成果をより高く評価し、新しい需要創出を加速させる狙いがあるはずだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
主要企業の中途採用比率が過去最高の37.6%に
2023年度、わが国主要企業の採用計画において、中途採用の比率が過去最高の37.6%まで高まったと報道された。中途採用の計画人数は、前年度の実績から24.2%も増加しているという。
中途採用の増加は、ある意味、わが国の労働市場の慣行が崩れつつあることを物語っている。具体的には、これまでの新卒一括採用、年功序列による人事評価、終身雇用からなる雇用慣行の限界が露呈しつつあるということだ。
労働市場に変化が見え始めていることは、わが国の経済にとって大きな変革といえる。近年、転職する人は増えているものの、国際的にはまだ少ない水準だろう。新卒で就職した会社から別の企業に転職をする、あるいは産業間を飛び越えることは起きにくい状況が長く続いてきた。それは労働市場の流動性を大きく阻害する要因だった。
そうした硬直的な労働市場の慣行が崩れ、流動化が進むことは、企業が適材適所の発想で人材を登用し、実力に応じた賃金を支払うことに通じる可能性が高い。長い目で見ると、労働市場の流動性の高まりは、経済全体の活性化につながることが期待できる。