上司が変われば、部下も変わる

書影『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(株式会社FeelWorks)『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(株式会社FeelWorks)
前川孝雄 著

 悩んだ彼は、人材育成で定評のある先輩管理職に相談しました。そこで、先輩から投げかけられた問いは、「目の前の苦しむ部下がもしも君の息子や娘なら、『それでも頑張れ』と説得するのか?」でした。彼はハッとして、「自分の子どもなら…『そんな心身を壊すほどしんどい仕事なら辞めなさい』と言うと思います」と答えました。部下を道具のように扱い、人として慮ることのなかった自分を反省したといいます。

 それからの彼は、部下への対応を改め、目標達成が難しいのはなぜか、どうすればよいと考えるか、部下の率直な意見を聞き、一人ひとり相手の立場になって親身に考えるようになりました。その結果、部下の様子は徐々に変わり、不調者や退職者も出なくなりました。そして、部下からの自発的な工夫や提案が上がり始め、自律的な営業活動でチームの成績も上向いていったのです。

 この事例は、上司が変わることで、部下も職場も大きく変化することを示しています。部下に自分の子どもや家族と変わらぬ愛情を持って対すれば、自ずと損得勘定を超えた関係が生まれ、信頼を結び直すことができるのです。上司は「愛他主義」をベースに置き、部下への接し方を内省し続けることが大事なのです。