左利きの女性は「男友だち」が多い?
加藤:次は、女性の左利きについて、考えてみましょう。
左利きの男性は、話すのが得意ではないとはいえ、そもそも男性は必要なこと以外、しゃべらない人も多い。
そのため、男性同士の輪にいても、疎外感を感じることはあまりないはずです。
ところが女性は、あれこれおしゃべりするのが好きですよね。左利きの女性は、右利きの女性に比べるとどうしても、考えをまとめて口にするのに時間がかかるので、無口になりがちです。
おしゃべりが好きな女性のコミュニティの中では、左利きの女性は孤独を感じやすいと言えるのです。そのため、できるだけ「目立たないようにしよう」としている女性も多い。
──なるほど。同じ左利きでも、そんな男女差があるのですね。
加藤:これは私の感覚ですが、左利きの女性は、男友だちが多いように思います。男友だちといると「気がラク」と感じるのかもしれませんね。
──それは、単純におしゃべりをしなくてすむからでしょうか。
加藤:人間は、似たような脳番地を使っている人に対し、共感が生じやすい。
つまり、左利きの女性は、右利きの女性よりも、右利きか左利きの男性に近い脳番地の使い方をしているので、男性に共感しやすいと言えます。
「左利きコンプレックス」は女性が強い?
加藤:左利きの女性は、女性のコミュニティの中で孤立感を感じやすいとお話ししました。
おしゃべりすることがコミュニケーションの大半を占めるなかで、言葉が出づらいことに劣等感を感じやすく、無意識にまわりに遠慮してしまうのでしょう。
左利きは、10人中、たった1人のマイノリティであるがゆえに、左利き同士で仲良くなる機会があまりありません。そのため、実際は、脳の使い方が違うだけなのに、自分がまわりから浮いてしまう理由がわかりません。
「左利きコンプレックス」は、男性よりも女性が強いように私は思います。実際に、右利きのお母さんが、左利きのお子さんを右利きに変更しようと試みているケースが少なくありません。
──でも『すごい左利き』をきっかけに、左利きだと公開する人が増えたと聞いています。
加藤:そうなんです。本の出版をきっかけに、私のところには非常にたくさんの左利きや、幼いころに、左利きを右利きに矯正した人、そして、右利きだけれど右脳もよく使うタイプの人などからの声が寄せられています。
多くは、これまで単なるカラダの使い方のクセだと思われていた左利きが、実は、脳の使い方から異なっており、尊重するべき個性を備えていることがわかったという喜びの声です。
そもそも左利きは、少数派であり、脳の違いからも大勢に賛同してもらえる意見を持つことが少ないでしょう。
でも、そこでくじけないでほしい。
右利きと左利きだけでなく、男性と女性、育った環境、20代と40代などの年齢差、職業の違いなどにより、私たちは一人一人、異なる個性や意見を持っています。
私はこれまで、1万人以上の脳の画像診断をしてきましたが、一人として同じ脳を持つ人はいません。人は違っていてあたりまえなのです。
ですから、左利きは、ちょっと言葉が出るのが遅いからといって「頭の回転がよくない」、考えがうまくまとまらないから「能力がない」などと、自分で自分を否定して可能性をつぶさないでほしい。
脳を知ることで自分を知り、一人一人が持つ能力を活かしていくことができる。
私はこれからも、一人でも多くの人が、思い通りの力を発揮し、豊かな人生を送るために、脳科学の側面からサポートしていきたいと思っています。
左利きの脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700ヵ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD(注意欠陥多動性障害)、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、子どもから超高齢者まで1万人以上を診断、治療を行う。「脳番地」「脳習慣」「脳貯金」など多数の造語を生み出す。InterFM 897「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務め、著書には、『脳の強化書』(あさ出版)、『部屋も頭もスッキリする!片づけ脳』(自由国民社)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『大人の発達障害』(白秋社)など多数。
・加藤プラチナクリニック公式サイト https://www.nobanchi.com
・脳の学校公式サイト https://www.nonogakko.com