10人に1人といわれる左利き。「頭がよさそう」「器用」「絵が上手」……。左利きには、なぜかいろんなイメージがつきまといます。なぜそう言われるのか、実際はどうなのか、これまで明確な答えはありませんでした。『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社刊)では、数多くの脳を診断した世界で最初の脳内科医で、自身も左利きの加藤俊徳氏が、脳科学の視点からその才能のすべてを解き明かします。左利きにとっては、これまで知らなかった自分を知る1冊に、右利きにとっては身近な左利きのトリセツに。本記事では本書より一部を特別に公開します。
「少数派」でも突き進めば
アイデアが育つ
左利きが、時間をかけてアイデアを育て独創性を発揮するために、気をつけるべきポイントがあります。それは、他人の評価に振り回されないということです。
そもそも、左利きは生まれたときから少数派です。絶対数が少ないうえに、脳の違いから意見も少数派になることが多いでしょう。また、そのようなときに左利きの独創的なアイデアを認めてくれる人は、そう多くはないはずです。(脳の違いの関連記事:最新脳科学でついに決着!「左利きは天才」なのか?)
しかし、まわりに理解されないからといって、自分の考えが「価値がないこと」だと思わないでほしいのです。
独創的であるほど反対されやすい
私は30歳のときに、脳の活動を計測する「fNIRS(エフニルス)法」を発見し、同時に脳のMRIネットワーク活動画像法を発表しました。
この二つの世界的なトップ技術が、現在の脳活動の画像化の発展に大きく貢献しているのは間違いありません。しかし、画期的で独創的な技術であればあるほど、これまでの「あたりまえ」にそぐわずに反対意見が多く出るでしょう。
そこでまわりの見る目や評価に左右されて自信を失ってしまうと、アイデアを育てる忍耐力が失われてしまいます。くじけそうになったときに、私がどうしたかというと、まわりの言うことではなく、昨日の自分と比べてどのくらい進歩したかで、自分自身に点数をつけるようにしました。
「これができたら昨日よりプラス1」「ここまでできたら、目標までの10の道のりのうち2進んだかな」などと、一歩一歩、階段を登るように、自分の足元をたしかめながら前に進むようにしたのです。
左利きが主に使う右脳は、まわりの環境情報を、五感を使ってフルに取り入れています。そのため、どうしても環境に影響されやすい側面があり、他人の意見を気にし過ぎることも少なくありません。
そんなときは、どんなに小さな進歩でも、まずは自分で認めてあげること。そうして、アイデアのタネを時間をかけてじっくり育てていきましょう。
(本原稿は『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』から抜粋、編集したものです。本書では、脳科学的にみた左利きのすごい才能を多数ご紹介しています)
左利きの脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。
14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700ヵ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD(注意欠陥多動性障害)、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、子どもから超高齢者まで1万人以上を診断、治療を行う。「脳番地」「脳習慣」「脳貯金」など多数の造語を生み出す。InterFM 897「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務め、著書には、『脳の強化書』(あさ出版)、『部屋も頭もスッキリする!片づけ脳』(自由国民社)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『大人の発達障害』(白秋社)など多数。
・加藤プラチナクリニック公式サイト https://www.nobanchi.com
・脳の学校公式サイト https://www.nonogakko.com