また、資産を残す側(被相続人)の思惑だけで行うのもよくありません。金融機関や不動産会社は被相続人に対して、経済的なメリットを重視して盛んに提案してきます。

 ところが、配偶者や子どもなどの相続人は「相続税を払ってもいいから、シンプルで手間がかからないほうがいい」と考えていたりするものです。売却するのに時間がかかる資産や、処理に大変な手間がかかる契約など、普段の生活に負担がかかるぐらいなら、税金を払っても気にならないという方も少なくありません。もともと自分の資産ではないのですから。

 相続では、無理に税金対策をする必要はありません。もし行うのであれば配偶者やお子さんの意向も踏まえながら取り組むのがよいと思います。残される人の中には、お金よりも、バタバタせずに故人を偲ぶ時間を大切にしたり、普段の生活に影響が少ないことを望む人も多くいます。お金は大切ですが、お金以外のことにまったく目を向けないまま相続税対策をすることはおすすめできません。

「お金の終活」4つの手順

 シニア世代の資産はいずれ相続によって配偶者や子、孫へと引き継がれていきます。そのときに向けて取り組むのが相続対策、「お金の終活」です。「お金の終活」にどのような手順で取り組めばいいのか、4つのポイントを挙げてみます。

(1)配偶者や子どもの意向を確認してみる

 本人がよかれと思ってしたことが、実は配偶者や子ども、孫の希望とは違っていた…というのは、お金の悩みでよくある話です。被相続人である本人の意向だけではなく、相続人の意向も確認しておかなければ、残念な結果になりかねません。

 だからこそ、まずはお互いの意向を確認してみることです。相続について、そこまで具体的に考えて行動している方はあまりいないかもしれません。まずはざっくりでも「いずれこうしたいと思っているんだ」といった感じで、きちんと話題にするところから始めてみてください。

 本人が高齢になれば、自然と配偶者や子どもたちには心配事が出てきているはずです。