働きながら3年で、9つの資格に独学合格! 大量に覚えて、絶対忘れないノウハウとは?
「忘れる前に思い出す」最強のしくみ、「大量記憶表」を公開!
本連載の著者は棚田健大郎氏。1年間必死に勉強したにもかかわらず、宅建試験に落ちたことをきっかけに、「自分のように勉強が苦手な人向けの方法を編み出そう」と一念発起。苦労の末に「勉強することを小分けにし、計画的に復習する」しくみ、大量記憶表を発明します。棚田氏の勉強メソッドをまとめた書籍、『大量に覚えて絶対忘れない「紙1枚」勉強法』の刊行を記念して、寄稿記事を公開します。行政書士、そして宅地建物取引士でもある棚田氏が事故物件について語ります。

【事故物件の超リアル】自殺だけじゃない! 家賃が下がる意外な物件とは?Photo: Adobe Stock

事故物件の超リアルをお伝えします

 今日は事故物件、そして心理的瑕疵(しんりてきかし)についてご紹介します。「自殺物件はいつまで事故物件扱いされるのか」「何が心理的瑕疵にあたるのか」などをお伝えします。

 これは、不動産会社に勤めている方はもちろんのこと、今後不動産を買ったり借りたりする可能性がある方は、絶対知っておいたほうがいい知識です。

 実は、事故物件の取り扱いについて、明確な法律やガイドラインはありません。

 だから、管理物件や所有物件で自殺等が発生すると、その後の募集にどう影響するのかわからないという人が多いです。実際、国交省でもこの状態を理解したうえで「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」を設置しています。そこで今回は「事故物件として扱われる心理的瑕疵」を徹底的にやりたいと思います。

事故物件として扱われる「心理的瑕疵」とは?

 事故物件というと、やっぱり自殺をイメージする人が多いんじゃないでしょうか。心理的瑕疵とは簡単にいうと、心理的な嫌悪感や圧迫感を感じることです。

 通常、瑕疵というと物理的なもの、つまり設備の故障なんかがありますが、心理的瑕疵とは、自殺や殺人などによって生じる精神的打撃です。

 例えば、物件で自殺者が出ると、次の入居者を募集する際にはそのことを告知しなければなりません。告知すれば当然人気が落ちます。だから家賃を下げなければならなくなります。これが心理的瑕疵による損害です。

 ではここで問題です。大家さんはこの損害を誰に損害賠償請求すればいいのでしょうか。答えは相続人です。マイナスの権利義務も引き継ぐので相続人が承継することになります。では、どの程度のことが起こると心理的瑕疵に該当するのでしょうか。順番に解説します。

1:孤独死

 最近1人暮らしの孤独死が時々テレビで報道されています。例えば、部屋で体調を崩したあと、救急車で搬送されて搬送先の病院で亡くなられた場合、特段影響はありません。

 一方で、室内で体調を崩してそのまま急死されて、そのまま発見が遅れてご遺体が腐乱するなどした場合は、精神的打撃が大きいので原状回復義務や逸失利益(家賃が下がることなど)の損害賠償義務を相続人が負うことになります。

 但し、孤独死の場合は自殺などに比べ精神的ダメージが小さいことから、そこまで大幅な損害賠償は認められにくい傾向があります。どの程度発見が遅れたかなどが影響すると考えられます。

 例えば、東京地判昭和58.6.27では、室内で賃借人が病死したことについて、賃借人の善管注意義務違反が認められませんでした。

 賃借人には部屋を大切に使って保管するという善管注意義務という義務があるんですが、病死は本人に過失ないから注意義務違反にはならないという判例があります。

 実務的には、次回募集時に礼金ゼロなどにして告知して、一度退去したらもう告知しないというケースもよくあります。

 対して、平成29.2.10では室内で賃借人が死亡して、死亡から1ヵ月後に発見された事例で、異臭やうじ虫が発生しました。このケースでは、原状回復義務違反による損害として1年間は賃貸不能、その後2年間は賃料が減額になることを前提とした逸失利益が認められています。ですから、かなりの額になったと思います。

 このように、同じ病死でも、発見までにかかった期間や状況によって変わってくるということです。

 ちなみに、季節も大きく関係します。冬場は発見が多少遅れてもそこまで腐敗は進みませんが、夏場だと数日遅れるだけで室内が大変なことになります。このあたりも損害賠償に大きく影響してくるでしょう。

 続きまして、自殺や殺人のケースをお伝えします。