少しでもモヤっとされれば「働かないおじさん」にカテゴライズ

 まず、中年男性に向かって悪意を込めて「おじさん」と呼びかけること、および「おじさん」だからといってバカにすることを、ここでは便宜的に「おじさんハラスメント」、略して「おじハラ」と呼ぶ。

 昨今は人間の営み全てに「ハラスメント」が付きうるハラスメントブームであり、「ハラスメント・ハラスメント」、略して「ハラハラ」なる語も出てきているくらいだから、「おじハラ」をその一座に加えたところで、さして問題はないだろう。

 なお、年齢に関連したハラスメントに「エイジハラスメント」があるが、おじハラは「おじさん」という語にのみ反応する、より局所的センサーを持つことにする。
 
 まず、「働かないおじさん」は元々、特に後輩・若手から憎まれて仕方のない構造の中にいる。勤続年数が長いほど給料が良くなる風土が根強い日本では、「いかに手抜きできるか」しか考えていないような中年男性の勤め人であっても、会社からその存在を許されている。その「働かないおじさん」も、実は昔は輝いていて、今の会社を作ってきた功績はあるかもしれないのだが、若手が現在の彼らを見て「自分より仕事をしていないのに自分より給料がいいとは何事か」と憤慨するのは当然である。
 
 たしかに、本当の本当に働かない「働かないおじさん」というのもいる。

 しかし、「働かないおじさん」という語が広くシェアされるようになってから、「全力では働かないおじさん(言い換えると、まあまあ働くおじさん)」や、「要領がちょっと悪いおじさん」など、若手を少しでもモヤッとさせる要素を持つおじさんたち全てが、片っ端から「働かないおじさん」にカテゴライズされそうになったり、ともすれば「おじハラ」を受けそうになっているのは、悲しい。
 
 しかしそれも、前述の通り、年功序列が強い日本の会社において「おじさんは憎まれやすい」ことに端を発した流れである。