仕事でほめられると誰でもうれしいものです。
しかし、ここにトラップが…。
「気がきく」「優秀な新人」といった一見ポジティブな評価が、その人にとってマイナスに働くこともあります。
そこで、30代で経営者歴10年以上、『20代が仕事で大切にしたいこと』著者の飯塚勇太氏に、仕事では「ほめられない」ほうが得をする「意外な理由」について伺いました。
(編集/和田史子)

書籍『20代が仕事で大切にしたいこと』の著者が教える、仕事では「ほめられない」ほうが得をする、意外な理由とはPhoto: Adobe Stock

他者への想像力は大切。だけど…

私は以前の記事でも、仕事で大切な3つのことの1つ目として

1.すべては「他者への想像力」

をあげました。

「自分以外の誰か」を頭において仕事をすれば、驚くほど仕事がスムーズに進み、あ
っという間に仕事ができる人になります。「他者想(他者への想像力)」さえあれば、
事はもちろん人間関係もうまくいく
といっても過言ではありません。

そして、他者への想像力(他者想)は、若手もベテラン社員も「絶対に身につけたい」能力だとお伝えしました(参考記事)。

しかし、それだけでは本当の意味で「仕事のできる人」ではありません。
大前提として、私たちビジネスパーソンに求められるのは「成果を出すこと」です。
ここを忘れてはいけません。

「結果」を追い求めずに他者想を発揮したところで、単なる「気のきく人」、悪く見れば「調子のいい人」にしかなりません。他者想は目的ではなく手段、すべては「成果を出すこと」が大前提であることを忘れてはならないのです。

すべては「成果を出すこと」が大前提Photo: Adobe Stock

とはいえ、いろいろな人から称賛され、「すごい人」と思われるのは、素直にうれしいものです。
自分で自分をほめ、実績を自信に変えるのも大切なことです。
だからといって、調子に乗ってはいけません。「自分ってすごいんだ」と全能感を得てしまうのは危険です。私自身、過去に調子に乗ってしまい、社運を揺るがすピンチを招いてしまったことがあります。本当に恥ずかしい話です。

そのときに得た教訓は
「称賛」とは、「過去に出した結果」についてくるものであり、「これから出すべき結果」と結びつくものではない
というものでした。

いわば過去の「結果」についてくる「フィクション」、現実とは切り離して考えるべきなのです。

「結果を出すこと」が一番尊い

素晴らしい結果を出している会社、素晴らしい結果を出している人はたくさんいます。
チヤホヤされて調子に乗っているうちに、いつか彼らに追い抜かれます。
失敗経験を経て、結果を出すことがいかに重要か、私は思い知らされました。

1年目は着実に結果を出していたのに、2年目以降、急に伸び悩む人を多く見かけます。

これは1年目の成績を見た周りから「すごいね」「優秀だね」とほめられ、そこで成長が止まってしまったことに原因があるのかもしれません。

こうなると、もはやチヤホヤは「ノイズ」に過ぎません。時には「トラップ」にもなります。
であれば、遮断するくらいでちょうどいいかもしれません。

ほめられたら感謝を伝えつつ課題を質問するPhoto: Adobe Stock

仕事を通じて成長したい、自信を持って働きたいと考えるのであれば、ほめられることをゴールにしてはいけません。
ほめられたときは「ありがとうございます」と素直に感謝を伝えつつ、
もっと良くするためには何をすればいいでしょうか」
「あえて課題をあげるとするならば何でしょうか」

と質問しましょう。必ず何らかのアドバイスが得られるはずです。

アドバイスをもらったということは、完璧ではないということ。
「まだまだ成長・改善の余地がある」ということでもあります。

仕事は常に「結果」が最上位。いつ何時でも、優先順位が最も高いのは「結果」であることを肝に銘じておきましょう。

飯塚勇太著『20代が仕事で大切にしたいこと』から一部を抜粋・改変しています)

飯塚勇太(いいづか・ゆうた)
株式会社サイバーエージェント専務執行役員
1990年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
2011年、サイバーエージェントの内定者時代に、友人らと開発・運営した写真を1日1枚投稿し共有するスマートフォンアプリ「My365」を立ち上げ、21歳で株式会社シロク設立と同時に代表取締役社長に就任(現任)。2014年、当時最年少の24歳でサイバーエージェント執行役員に就任。2018年株式会社CAM代表取締役、2020年株式会社タップル代表取締役に就任(現任)。2020年サイバーエージェント専務執行役員に就任(現任)。
『20代が仕事で大切にしたいこと』が初の著書となる。