給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。今回は、レオス・キャピタルワークス 株式戦略部 シニア・アナリスト 大城真太郎さんのコラムより抜粋。

【銘柄発掘と分析のプロに聞く】今後、市場の伸びが期待できる4つの分野とは?Photo: Adobe Stock

廃棄物処理やリサイクル分野に注目

――長期投資という観点で、大城さんが有望だと思う分野やテーマを教えてください。

大城真太郎(以下、大城) まずは廃棄物処理リサイクルの分野です。最近は、ESGやSDGsという言葉も広まっていますが、社会全体が環境配慮型、循環型になっていくというのは一時的な流行りを超えて、不可逆な流れとして続いていくと思います。そうした大きな時代の流れの中で、この分野の需要というのは、これからも高まり続けるでしょう。

 その一方で、この分野は非常に参入障壁が高くて、なかなか新規参入しづらい面があります。

 まず、廃棄物を処理するために非常に大きな施設や設備が必要になりますが、それを作るには、自治体や住民との交渉が必要になります。このプロセスがなかなか複雑で一筋縄ではいかないのです。

 廃棄物処理にはさまざまな規制がありますし、そもそも廃棄物処理施設はどこに行っても歓迎されません。そうしたさまざまな困難を乗り越えて粘り強くプロセスを踏んでいく必要がありますし、技術やノウハウの蓄積も必要になります。とてもじゃないけど新規参入の会社が簡単にできるものではありません。

 需要は高まり続けるけど、新規参入は困難ということで、この業界で実績・ノウハウ・技術・設備を持つ会社は非常に良いポジションを築いているといえます。

 廃棄物の場合、回収・運搬、中間処理、リサイクル、最終処理といろいろなプロセスがあって、どのプロセスも参入障壁は高いのですが、とりわけ最終処分の分野の参入障壁は断然高いです。

 最終処分というのは埋め立てをすることですが、埋め立て場をつくるのは非常に至難の業(わざ)なのです。ですから、そのあたりの事業を手掛ける会社は非常に有望だと思います。

――その他にも、長期的に有望と思われている分野はありますか?

大城 再生医療の分野も長期的にかなり大きく成長するだろうと思って注目しています。国も国策として推進していて、経済産業省の資料によると世界の市場規模は2020年に1兆円だったものが、2030年には12兆円、2050年には38兆円になると見積もられています。

 特に、ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授の影響もあり、日本には有力な企業や有力な大学の研究・技術が多いです。今後、日本にとって有力な産業になっていく可能性が高いと思います。そうした中で細胞を培養する機器のメーカーは有望ですし、細胞の培養を受託するCDMO(医薬品製造開発受託)のビジネスも成長が期待できます。再生医療における細胞の培養というのは非常に難易度が高くて、それを手掛けている会社には注目したいと思います。

 それから、宇宙産業も今後かなり大きくなると思っていまして、私自身、今いろいろ研究したり調べたりしているところです。人工衛星の技術は、天気、防災、防衛、通信、農業、漁業などさまざまな分野を大きく変える可能性がありますし、この分野も今後かなり大きな産業分野になっていくと思います。

小泉秀希(こいずみ・ひでき)
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/