ビジネスの現場では、人前でハキハキと話せる「社交的な人」が有利だと思われがちです。しかし、台湾出身で、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャン氏の世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(神崎朗子訳)によると、「内向的な人」こそ、冷静さ・思慮深さ・協調性といったビジネススキルを兼ね備えているといいます。
内向型の生まれ持った強みを肯定し、勇気づける本書には、「目からウロコの内容に感動した」「自分らしく生きていけばいいと気づけた」と日本中から絶賛の声が集まっています。
今回は、ジル・チャン氏の来日特別講演(ダイヤモンド社「The Salon」主催)の模様を、全2回のダイジェストでお届けします。(構成/根本隼)

本当に賢い人が「人前で話すとき」にやっていること・ナンバー1

「人前でのトーク」の前は事前準備を完璧にする

 私は、とても内向型の人間です。人前に出るのが苦手で、講演の3週間前から「どんな質問が来るだろう」「段取りを失敗したらどうしよう」などと当日のことをいろいろ心配してしまいます。

 そんな私でも、これまで数多くの講演やインタビューを成功させることができたのは、内向型ならではの「強み」を自分で把握して、それを有効活用してきたからです

 内向型の長所については『「静かな人」の戦略書』の中でたくさん紹介しましたが、たとえば「冷静さ」が挙げられます。早まった判断をせずに、仕事を慎重かつ緻密に進めることができるので、事前準備の質が高く、リスク管理にも秀でています

 さらに、物事に取り組むときに外的な動機づけに頼らず、内発的なやりがいを見つけて自分を鼓舞できる「思慮深さ」も持ち合わせています。

 これらのストロングポイントを戦略的に生かせば、完璧に準備ができた状態で本番に臨めるので、人前でも落ち着いて話せるようになります。

「内向型」という性格は弱点ではありません。ただ単に、他人と「違うだけ」なんです。

上手に「自己アピール」するコツ

 内向型人間は、同時に複数のタスクをこなそうとしても、すぐ疲れてしまいます。1つひとつのことに時間をかけて丁寧に取り組むので、周りと比べてエネルギーを消耗しやすいからです。

 なので、自分が「活躍できる場所」を冷静に見極めて、そこでエネルギーを戦略的に活用しましょう。

 ただし、「活躍できる場所」で仕事をするチャンスを得るためには、自分をうまく売り込んで、競争に勝つことが必要です。

 「自分を売り込むなんて性格的に無理」とは思わないでください。内向型の人でも、上手に自己アピールできるコツがあります。それは、自分の話に「事実・データ」を積極的に盛り込むということです。

 客観的な事実や、データなどの数値は、誰にとっても説得力のある判断材料です。自分の長所や過去の成果をアピールする際には、これらの要素を使って訴求しましょう。自分を実際以上に大きく見せるような「大げさな言葉」は必要ありません。

内向型の人は「会議」に苦手意識がある

 内向型人間がよく苦労するのが「コミュニケーション」です。

 直接の会話だけでなくメールなども含めた広義のコミュニケーションは、日々の仕事の7~8割を占めていますが、内向型の人が特に苦手意識を持っているのは「会議」ではないでしょうか。

 内向型の多くは、会議で繰り広げられている議論の内容を吸収したり、自分の考えをまとめて言語化したりするのに時間がかかるからです。

 私もかつては常にテーブルの端に座って、誰にも指名されずに会議を乗り切ろうとしていました。でもあるとき、こんな参加の仕方では「私の存在価値はゼロだ」ということに気づいたんです。

 それから私は、内向型なりに会議で活躍できる方法を考えて実践し、存在感を発揮できるようになりました。今回は、会議の前と後にそれぞれできることをご紹介します。