もちろん、要約において大切なポイントは〈主張-理由・根拠〉には限りません。論の展開の仕方しだいでは、〈主張〉に対する〈対比〉を付け加えたほうがよい場合もあるでしょう。抽象的な記述のみを拾うのではなく、時には具体的な情報にある程度は言及したほうが要約の質が上がることもあるかもしれません。

 そうした判断ができるには、やはり個々の文章における文と文のつながり方、話の展開を把握することが大前提になります。「話の展開を整理してみたところ、この文章の〈主張〉を説得力あるものにするには、〈対比〉の要素も要約に組み込んでおいたほうがいいとわかった」――例えば、そんな判断もできるようになるわけですね。

 要約に必要な要素を把握するためにも、〈話の展開を理解する〉ことは、とても大切なことです。最初は「めんどうくさいなぁ……」と思っても、じっくり、文章のつながりを考えながら読んでいってください。そのようにしてある程度文章に入っていくことができれば、あえて言葉にせずとも、そうした流れを意識しながら、かつペースアップして読むことができるようになっているはずです。

――〈メモ〉や〈要約〉を参照しながら、新たな本や文章を読み進めていく。そのことによって、「社会や世界、あるいは自分自身」について考えるための〈思考の軸〉は、より深く掘り下げられ、より広く、開かれていくことでしょう。