中国の厳しいコロナ政策から逃れるように、日本へ移住してくる中国人の家族が増えている。 Photo:PIXTA中国の厳しいコロナ政策から逃れるように、日本へ移住してくる中国人の家族が増えている(写真はイメージです) Photo:PIXTA

最近、中国人富裕層が日本に移住し、日本の不動産を爆買いしているという記事をよく目にするようになった。「日本が買い占められるのではないか」と心配や不快感を抱く日本人も少なくない。確かに、コロナ禍を経て中国から日本へ移住する中国人が増えている。しかしその中心は、富裕層ではなく「中間層」で、不動産購入どころか家族と一緒に賃貸住まいをしている人も多い。今回、2022年に中国から日本にやってきた2組の家族に直接会い、話を聞くことができた。(日中福祉プランニング代表 王 青)

社会的地位があり、金銭的にも困っていない
中国人夫婦が、上海から大阪へ移住

 昨年5月、上海がロックダウンの真っ最中だった頃、厳しい監視をかいくぐって日本に到着した、劉清流さん(仮名、40代後半)一家。彼らは大阪に住んで1年になる。

 劉さんは中国で日本の「経営・管理」の在留資格※を取得したものの、当時一般市民は自宅から出られない状況だったため、劉さんは防護服を着て、コロナの重病患者を装い、ネットで見つけた白タクで空港までたどり着いた。途中、警察から何度も車を止められて尋問を受けた。白タク代は通常料金の20倍だった。ロックダウン下で日本に来るのがどれほど大変かについては、以前“「やっと人間の世界に戻った」と涙…中国で日本移住の人気が急上昇の事情”という記事で紹介しているので、詳しくはそちらを参照してほしい。

※「経営・管理」在留資格…日本で会社を設立し、事業を興す外国人起業家が、その事業の経営や管理を行うために取得しなければならないビザのこと。

 劉さん一家は、劉さんと妻、小・中学生2人の息子の4人で暮らしている。劉さんは、車部品の貿易会社を営んでいた。奥さんは国のラジオ局でバリバリ働いていたディレクターだった。社会的地位は悪くない。金銭的にも生活にはまったく不自由はなかった。

 それなのになぜ日本に来たのか?と聞くと、答えは一言「子どもの将来のため」だという。

「最近の息子たちの学校教育や教科書を見ると、愛国教育があまりにも強まり、政治的なプロパガンダのウエートが年々大きくなっていると感じる。子どもたちが洗脳されていくことを恐れ、何とかしないといけないという危機感を覚えた」と話す。