日経平均がバブル後最高値を更新した。だが、「将来のお金の問題が不安だ」「投資が大切だと漠然とわかっているが、なかなか行動に踏み切れない」「貯金や投資を始めてはみたものの、自分の方法が正しいかどうか確信が持てない」──そんな悩みを抱えていないだろうか? そんな人に朗報がある。
全世界300万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルが「ニックのように、データの真の意味を理解できるデータサイエンティストでありながら、 説得力のあるストーリーを語れる人はまずいない。絶対読むべき一冊だ」。全世界1000万部突破『Atomic Habits』著者ジェームズ・クリアーが「お金に関する価値ある知恵と実践的なアドバイスが満載」と評した一冊が日本上陸。
全米ベストセラー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』だ。
全米屈指のデータサイエンティストによる、お金を貯め、富を築くための証明済の方法を初公開。本稿では、本書から一部を抜粋・編集しながら、「宝くじの魔力」について見ていこう。
「宝くじ当選」という奇跡
2002年のクリスマス。
ウェストバージニア州全域で、人々は取りつかれたようにお金を使っていた。
だが、買っていたのは、贈り物でもエッグノッグ(牛乳ベースの甘い飲み物)でもなかった。
それは宝くじだった。
午後#時26分、この熱狂はピークに達した。
1秒に15人が宝くじを購入した。
チク、タク、タク――たった3秒で、45人が希望に胸を膨らませ、宝くじを手にした計算だ。
ジャック・ウィテカーもその一人だった。
いつもは買わないが、賞金額が1億ドル以上という今回は話が別だった。
このチャンスを逃す手はない。
宝くじを買ったジャックは、何年も連れ添った妻・ジュエルが待つ家に向かった。
夜11時、数字選択式の宝くじ「パワーボール」の当選番号が発表された。
ジュエルは眠っていたジャックを叩き起こした。
すると奇跡が起きた。
5つの数字のうち4つが当たっていたのだ。
1等ではなかったが、6桁の賞金が得られる。
2人は大喜びして眠りについた。
米国史上最高額に当選!
翌朝、ジャックは出勤前にテレビをつけ、驚愕の事実を知った。
昨夜の数字の一つが、誤って発表されていたのだ。
正しい番号と自分の宝くじを照らし合わせて、思わず息をのんだ。
1等に当選――そう、単一の宝くじとしては米国史上最高額(当時)となる3億1400万ドル(約400億円)を引き当てたのだ。
ジャックはすぐに、税引後の賞金1億1300万ドルを受け取った。
だが、その後のジャックの人生がうまくいかなかったのはもうおわかりだろう。
賞金を手にしてから2年も経たないうちに、ジャックの孫娘が死んでいるのが発見された(薬物の過剰摂取によるものと見られている)。
妻とは疎遠になり、ジャックはギャンブルや娼婦に湯水のごとく金を使った。
酒に酔って車を運転するのも当たり前になった。
結局、賞金はすべてなくなった。
「なんだ、宝くじの当選者が道を踏み外したというよくある話か」
と思ったかもしれない。
「すでに金持ちだった」
という意外な事実
だが、ジャック・ウィテカーのケースは少しばかり話が違う――彼は、すでに金持ちだったのだ。
そう、人生を変える宝くじを買う前から、ジャックには1700万ドル以上の資産があった。
ウェストバージニア州の請負会社「ディバーシファイド・エンタープライズ・コンストラクション」社長として事業で大きな成功を収め、すでに多額の報酬を得ていた。
お金が簡単に
人を変えてしまう魔力
このエピソードを紹介したのは、十分な良心、経歴、分別のある人でさえ、お金で人生を破綻させることがあると伝えたかったからだ。
ジャック・ウィテカーは悪い人間ではなかった。
妻と孫娘を愛していたし、教会にも通っていた。
宝くじに当選した直後に、非営利財団の設立資金として数千万ドルも寄付していたくらいだ。
それでも、誘惑には勝てなかった。
お金にはこれほどまでに、人を変えてしまう魔力がある。
皮肉にも、ジャックがすでに自分が十分に裕福だと気づいていたら、こんなことにはならなかっただろう。
ジャックは自分のことを金持ちではないと思っていた。
なぜそれがわかるか?
1700万ドルもの資産を持っていたのに、宝くじを買っていたからだ。
ジャックは人一倍貪欲な男だったといえるのかもしれない。
だが私は自身の経験から、人は自分の豊かさに気づくのが困難なことを知っている。
(本稿は『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』の一部を抜粋・編集したものです)