「20代で成功しすぎた人」が待ち受けている残酷な末路

SNSの総フォロワー数は300万人を超え、YouTube動画の月間再生数は3億回を超えるなど、現在、日本中で大ブレイク中のひろゆき氏。
彼の最新刊『99%はバイアス』では、「ブレイクの秘訣」を明かし、「どうすれば影響力を持てるのか?」「口のうまい人がトクする世の中で、どう生きるべきか?」などをマジメに語った。
今回は、本書の発売を記念し、特別インタビューを実施。「キャリア初期に成功しすぎてしまうリスク」について、ひろゆき氏に聞いた。(取材・構成/川代紗生、撮影/榊智朗)

幸せを感じられない人ほど
「一発逆転」を期待する

──『99%はバイアス』には、私たちがとらわれがちな数々の思い込み・偏見や誤解について書かれていました。「仕事ができるようになれば、人生うまくいくはず」「成功すれば、悩むこともなくなるはず」というのも、私たちの中にある一つのバイアスだと思います。
「成功」と「幸せ」は必ずしも一致しないと思うのですが、ひろゆきさんはどうお考えですか。

ひろゆき:まず、「成功」という言葉で全部を一つに括ってしまうのが、違うような気がしていて。

 たとえば、「やりたかった仕事で稼げていて、かつ、ストレスを解消するためのプライベートな時間もある。精神的に無理をしないで生活できている」という状態なら、「成功」と「幸せ」が一致している、と言えると思うんですよね。

──そうですね。「社会的な成功」が、その人のメンタルを蝕んでいない状態。

ひろゆき:でも、本当は一人でゆっくりする時間がほしい性格なのにタレントになっちゃって、日本全国でドサ周りをやり続け、睡眠時間も毎日1時間しかない、とかだと、ちょっときついじゃないですか。

──たしかに。

ひろゆき:だから、「こうすればこうなるだろう」みたいな、わかりやすい因果関係で全部を判断しようとするんじゃなくて、自分の人生において何を目的とするか、細かく分析したほうがいいと思いますね。

 幸せを感じられない人ほど、「一発逆転」を期待するんですよ。満たされない思いを「一発逆転」によって変えようとするクセがついている。

 お金や地位、学歴など、「人生を一発逆転させてくれる何か」を常に求めているから、せっかく何かを手に入れてもすぐに飽きるし、また「手に入れたらチヤホヤしてもらえる結果」を求める。それが手に入っていない人生は幸せではないと考えてしまう。そういう構造だと思います。

「メンタルの壁」を越えられない人

──ひろゆきさんのまわりで、「世間的には成功してるように見えるけど、メンタルはボロボロでつらそうだな」という人はいますか?

ひろゆき:やっぱり、インターネットで活動している人には、そういうタイプが多い印象ですね。僕、YouTuberをサポートする事業もやっているので、彼らの話を聞いたりすることもよくあるんですけど、YouTuberでも、メンタルの壁を越えられない人が結構いるんですよ。

──「メンタルの壁」。

ひろゆき:はい。YouTuberという仕事は、芸能界でもかなり特殊なんですよね。

 芸能事務所に所属しているタレントさん・役者さんの場合、「製作側に言われた演技をする」のが基本じゃないですか。だから、「これは私ではありません」って言えるし、自分の中でもある程度、棲み分けしやすいんだと思うんです。

 でも、YouTuberは「自分を見てください」「これが本当の自分だよ」という体で発信をしているし、「本当の姿を見せてくれている」という信頼感でリスナーと繋がっているので、何か齟齬があったときに、その人本人の問題になっちゃうんですよ。

「スタイリストがついて、きちんとおめかしして、バラエティに出て、カンペに言われたことを言って炎上しました」なら、「これは自分ではないよね」と思える。「自分ではない、自分が演じた『誰か』が炎上した」と捉えることができる。周りの親しい人たちも「自分の役割をこなしただけだから、仕方ないよね」と理解してくれるし、起きた問題に対して謝罪するのも自分じゃなくて番組側。

 でも、YouTuberにはそんなのないんですよ。自分が言ったことで炎上したら、「それはお前が悪いよね、じゃあ謝るのお前だよね」ってなっちゃう。そこで迷わずサラッと謝れる人もいれば、本気で落ち込んで二度と戻ってこれない人もいる。そこに「メンタルの壁」がある気がしますね。

──それだと、「仕事での失敗」=「人生終わり」みたいに、極端な考え方がクセになってしまいそうですね。

ひろゆき:だから、そこに耐えられる人以外は、なんだかんだ、ちょっとずつ脱落していってる気がしてて。YouTuberのトップ勢があんまり増えない原因の一つはこれじゃないかな、と思ってるんですよね。

 トップ勢のHIKAKINさんやヒカルさんには、全然売れてない、ただの「趣味動画クリエイター」だった時代があるので、メンタルがすごく強いんですよ。たとえばHIKAKINさんは、初期の頃はスーパーの店員として働きながら、当時いまほど認知度がなかったYouTubeで、動画配信を続けていた。チヤホヤされてない時代も経験しているわけです

 でも、いまの若い人たちって、若いときにチラッと上げた動画でいきなりチヤホヤされちゃってるので、お金がない生活とか嫌われるとか無視されるとか……そういうきつい時期に慣れてない状態で人前に出てしまっている。十分な耐性がないのに、外を歩いていると指をさされる。あれはなかなか大変そうだな、と思いますね。