日経平均は来年4万円超え視野、インフレ率の底上げで株高トレンド継続へ幸運な条件が重なれば日経平均5万円台への中期上昇トレンドもあり得る?Photo: Reuters/AFLO 

 前回4月の論考で、インフレ率の底上げが日本企業の自己資本利益率(ROE)を押し上げ、それが日本株上昇の新トレンドを引き起こすだろうと述べた(「脱デフレ時代、ROEの向上で日本株上昇トレンドが始まる」2023年4月17日掲載)。また、それが始まるのは2024年だろうとも述べたが、4月下旬以降の日本株の著しい上昇を見る限り、筆者の予想より早く始まったようだ。

 もっとも株価上昇が始まって日もまだ浅く、その持続性に懐疑的な声もある。今回は足元の株価の上昇基調の持続性を考えてみよう。

 結論を先に言えば、短期的な反落局面も伴いつつ、日本株上昇の新しい中長期的なトレンドが始まったと筆者は考えている。2024年中には日経平均株価指数で4万円超えも見えて来るだろう。

日本固有の事情による過去3度の株高

 今回の日本株の上昇は、米国株を中心とする海外の株価指数の上昇との連動性は弱く、日本固有の事情が働いている。こうしたパターンは2000年まで振り返ると今回を含めて3回だけだ。

 最初は2003年5月からの株価反騰だ。日経平均は同年4月の底値7000円台から同年10月の1万1000円台まで吹き上がった。当時、銀行のワシントン事務所所長だった筆者は、現地の「日本たたき」で有名だった米国の某エコノミスト氏が「バカが買っているだけだ」と冷笑していたことを覚えている。ところが株価はその後も中期的な上昇基調をたどり、2007年7月の1万8000円台まで上昇した。このときの契機は日本の「銀行危機シナリオ」の終焉だった。

 2003年春まで日本の銀行の積み上がった不良債権で「銀行危機が起こる」という危機予想が執拗(しつよう)に続いていた。しかし、大手銀行は2003年3月決算で大規模な不良債権処理を実行した。最後まで懸念されていた、りそな銀行の事実上の国有化(当時の金融担当相は竹中平蔵氏)が発表されると、銀行危機シナリオが払しょくされ、割安感のあった日本株に海外投資家の買いが殺到した。2003年から2005年まで3年間の海外投資家の日本株買い越し額は26兆円にも及んだ(東証公表の現物株売買)。

 2回目は2012年12月からの「アベノミクス」スタートで円高是正、デフレ脱却が進むという期待が高まった局面だ。もともとの割安感も手伝い、日経平均は2012年10月の8000円台から2013年12月には1万6000円台まで急騰、海外投資家の日本株買いは2013年に15兆円に及んだ。

 その後も日本株は、前回論考で示した通り、企業のROEや売上高利益率の趨(すう)勢的な向上に支えられて、2020年春の新型コロナショックによる急激だったが短期的に終わった反落局面を乗り越え、日経平均でおおむね2万5000円から3万円のレンジで推移していた。

 そして3回目の今回は、日経平均で3万円の壁を突き抜け、高値を更新した。やはり3月までは東証銘柄の平均株価収益率(PER)は13~14倍と割安で、4月から5月の海外投資家の日本株買い越し額は4.5兆円であり、アベノミクス相場の初期と似ている。今回の日本株上昇の理由は次の4つにまとめられるだろう。