新型コロナウイルス禍が落ち着き始め、企業業績への影響も緩和されてきた。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった難題がいまだに日本企業を苦しめている。その状況下でも、企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はNTT、ソフトバンク、KDDIの「通信」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
通信業界3社は通期で増収増益
NTTでは「過去最高ラッシュ」
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の通信業界3社。対象期間は2022年11月~23年3月の直近四半期(3社いずれも23年1~3月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・NTT
増収率:10.2%(四半期の営業収益3兆5636億円)
・ソフトバンク
増収率:3.3%(四半期の売上高1兆5665億円)
・KDDI
増収率:3.9%(四半期の売上高1兆4889億円)
通信業界の3社は、いずれも前年同期比で増収だった。中でもNTTは2桁増収と好調だ。
23年3月期の通期決算でも、各社はそろって増収増益を達成。子会社のNTTデータが手掛けるシステムインテグレーション事業などが堅調だったNTTは、営業収益・営業利益・純利益の全てで「過去最高」を更新した。
だが、これまで本連載で解説してきた通り、政府による携帯電話料金値下げ要請を受けて21年に格安料金プランを導入した影響が長引き、3社では通信料収入の減少が続いている。
にもかかわらず、3社が増収を成し遂げられた要因は何なのか。
また、24年3月期の通期業績予想に目を向けると、3社のうち1社だけが営業利益・純利益ともに「2桁減益」を見込んでいる。
他の2社は増収増益を予想している中、この企業だけが減益に陥る理由は何なのか。
次ページでは、各社の増収率の推移と併せて、通信料収入の減少をカバーした事業について詳しく解説する。また、23年度に「2桁減益」を予想している企業と、その要因についても見ていく。