陰謀論集団のQアノン。そして日本のQアノン的存在は「Jアノン」と呼ばれる。各地でデモを行うJアノンだが、そこには統一教会の分派であるサンクチュアリ教会が深く関わっている。彼らの実態を藤倉善郎が解説する。本稿は、石井大智編著・清義明、安田峰俊、藤倉善郎著『2ちゃん化する世界 匿名掲示板文化と社会運動』(新曜社)の一部を抜粋・編集したものです。
トランプ支持デモ団体の連絡先は
サンクチュアリ教会の電話番号
日本のQアノン的な集団は、ネット上では「Jアノン」とも呼ばれる。その中心は、サンクチュアリ教会や幸福の科学だ。米大統領選前後、頻繁に路上デモを繰り返した主要勢力として最も目立った存在だった。そのため、当時「Jアノン」という総称があてられた。
ネット上で発生した総称なので、JアノンにQAJF(日本におけるQアノンの先駆け的存在「Q Army Japan Flynn」)を含めるべきか否か等、明確な定義や線引きはない。とは言え、これら宗教系の運動は「Q」を自称しておらず、その主張はQAJFに比べて遥かに強い日本特有の色を帯びていた。ここではさしあたって、これら独自色の強い一群を「Jアノン」と捉えたい。
Jアノンは、QAJFの登場から約1年遅れて台頭した。
2020年11月12日に行われた首相官邸前でのトランプ支持集会の主催者は、「トランプ大統領を支援する会」「日米同盟強化有志連合」「自由と人権を守る日米韓協議会」の3団体。路上での活動以外の実態は不明だが、各団体に日本サンクチュアリ協会の関係者が関わっている。中でも「自由と人権を守る日米韓協議会」には、日本サンクチュアリ協会の会長・江利川安栄氏が関わっている。統一教会の日本支部に当たる日本統一教会で、かつて第7代会長を務めた人物だ。
2020年11月29日に銀座で、12月20日に大阪で、それぞれデモを主催した「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」。この団体と前述の3団体の関係ははっきりしないが、デモのチラシのデザインが似ていることなどから推察するに、関連団体かもしくは支援者が重なっているように見える。
前述の3団体のうちの1つ「トランプ大統領を支援する会」の事務局長・小林直太氏も日本サンクチュアリ協会の関係者。統一教会信者だった2011年にはさいたま市議会議員選挙に立候補し落選した人物だ。彼は繰り返し「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」によるデモにも参加し、事前告知や参加レポートを自身のフェイスブックに投稿している。
2021年1月17日に福岡でもデモが行われたが、こちらは「日本の自由と平和を守る会 福岡」が主催で「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」が協賛。チラシに記載された主催者の代表者は、福岡県にある「九州有明サンクチュアリ教会」の教会長・松本昌昭氏と同姓。連絡先電話番号は日本サンクチュアリ協会のウェブサイトに掲載されている同教会の番号と同じだった。