安倍晋三元首相安倍晋三元首相 Photo:Antonio Masiello/gettyimages

安倍晋三元首相が奈良市で街頭演説中、銃撃された事件は8日で1年。安倍元首相を殺害したとして起訴された山上徹也被告(42)の初公判は年明けになる見通しで、恨みを募らせたと供述している世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令請求の可否がどうなるのかも不透明なまま。この間、岸田文雄首相が遊説先の和歌山市で爆発物を投げ込まれるなど、要人警備の難しさも明らかになった。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

事件現場近くの慰霊・顕彰碑建立は
地元住民らの反対もあり断念

 自民党奈良県連の有志でつくる「安倍晋三元内閣総理大臣感謝と継承の会奈良」が建立した「留魂碑」の除幕式が1日、奈良市の霊園で開かれた。碑は安倍元首相が敬愛した吉田松陰の著・留魂録から引用し、安倍元首相が生前好んだ「不動心」の文字が刻まれている。

 事件当日に応援を受けた佐藤啓参院議員らが出席し、安倍氏の妻・昭恵さんの「多くの方に訪れていただき、主人を思い出していただければ何よりの供養になるかと思います」とのメッセージが読み上げられた。

 全国紙社会部デスクによると、近鉄大和西大寺駅前の整備事業に合わせ、事件現場付近に建てる案も浮上したが、地元住民らの「事件を思い出してしまう」と反対する声もあり、断念したという。

 事件現場で現行犯逮捕された山上被告は殺人罪のほか、凶器となった銃や銃弾に絡んだ銃刀法や武器等製造法、火薬類取締法違反の罪、教団関連施設が入るビルに試射したとして建造物損壊の罪でも起訴された。

 6月12日、山上被告も出席して第1回公判前整理手続きが開かれる予定だったが、奈良地裁に不審物が届いたとして中止に。奈良県警の爆発物処理班が出動し危険物が混入していないか確認したが、入っていたのは山上被告の量刑を軽減するよう求める約1万3000人分の署名だった。

 地裁の職員が開封せず金属探知機で検査していたところ反応したため、県警に通報。署名活動している人物が送付の事実を認め「手続きを妨害する意図はなかった」と説明したが、探知機が反応した理由は不明で、とんだ「肩すかし」となってしまった。

 仕切り直しの期日は未定だが、山上被告は「自分が出席することで騒ぎが起きたのかもしれない。次回はよく考えたい」と話しているという。今後の手続きでは争点や証拠が絞り込まれる。