腹部エコーを受けたほうがいい理由

 ヘビースモーカーの高齢者に受けておいてほしい検診が「腹部超音波検査」(以下:腹部エコー)です。あまり知られていませんが、高齢の喫煙者に起こりやすい病気があります。

 それは「腹部大動脈瘤」です。体の真ん中を走っている、最も太い大動脈という血管の一部分が風船のように膨らんでしまい「コブ」ができます。

 たばこによる動脈硬化の影響で、コブができやすくなるといわれています。コブが大きくなるにつれて便秘や腰の痛みが起こり、もし破裂すると大量出血して死に至ることもある恐ろしい病気です。

 この腹部大動脈瘤は、早期発見できれば手術で血管を修復できます。腹部エコーの検査でお腹の表面から超音波を当て、膨らんだ大動脈を浮き彫りにして早期発見につなげられるケースがあるのです。

 そもそも65歳を越えた男性がかかりやすい病気なので、たばこを吸っていなくても、腹部エコーは高齢の男性に受けてほしい検査です。高齢×男性×喫煙者はトリプルリスクになりますので、特にオススメします。

【出典】
※1 J K Gohagan,et al. The Prostate,Lung, Colorectal and Ovarian(PLCO)Cancer Screening Trial of the National Cancer Institute: history, organization, and status. Control Clin Trials. 2000 Dec;21(6 Suppl):251S 272S.
※2 有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン. 癌と科学療法 :34;481 501(2007)
※3 National Lung Screening Trial Research Team,et al. Reduced lung cancer mortality with low dose computed tomographic screening. N Engl J Med. 2011 Aug 4;365(5):395 409.

(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)