「病気になりたくない」というのは、すべての人に共通する願いです。しかし、病気にならないためにどんな行動をとるべきなのかは「よくわからない…」という方が多いのではないでしょうか。
そんななか、「科学的に正しい」健康習慣の身につけ方を明かした、公衆衛生学者・林英恵さんの最新刊『健康になる技術 大全』が話題を呼んでいます。最先端のエビデンスをベースにした「健康に長生きする方法」を伝授する本書に、読者からは「健康関連本としてはブッチギリのベスト」「一家に1冊置いておくべき」と激推しの声が続々と届いています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、体に良くない「2つの食材」を明かします。
監修:イチローカワチ(ハーバード公衆衛生大学院教授 元学部長)
*書籍『健康になる技術 大全』の「食事の章」はケンブリッジ大学疫学ユニット上級研究員 今村文昭博士による監修

【世界最先端のエビデンスで判明】病気になりたくなかったら食べない方がいい“2つの食材”Photo:Adobe Stock

病気がイヤなら食べない方がいい“2つの食材”

 近年、肉は種類によって病気のリスクを上げることが示唆されています。より注意が必要なものとして、赤肉加工肉が挙げられます。

 赤肉とは、牛、子牛、豚、ヒツジ、子羊、馬、ヤギなどの哺乳動物の肉のことを指します(一般的に「脂身が少ない」ことを意味する赤身の肉とは異なります)(*1)。対して鶏肉は「白い肉」とされ、赤肉とは区別されます

 加工肉とは、保存や味をよくするために何らかの加工を施した肉のことです。多くは、牛肉や豚肉などの赤肉を含んでいます(鶏肉を含む場合もあります)。ハムやソーセージ、ベーコン、ビーフジャーキーやコンビーフ、肉の缶詰や肉をベースに作ったソースなども含まれます(*1,2)。

赤肉と加工肉が体に良くない理由

 まず成分に関しては、鉄分をとりすぎること、肉を加熱することで発生する化合物、飽和脂肪酸の摂取や動物性たんぱく質そのもの、腸内環境への影響が原因ではないかとする、様々な仮説が挙げられています(*3)。現状では、特定の物質に悪い効果を転嫁できるわけではないようです。

 食生活に関しては、肉自体のリスクだけではなく、肉を中心にした食生活が健康に影響を与えている可能性が示唆されています。アメリカ人を対象とした研究では、赤肉と加工肉を多く摂取する人は、精製された穀物、甘いもの、フライドポテトなども摂取する傾向を示しました。

 肉そのものが悪影響を与えているのか、他の食べ物などの影響が原因なのか厳密には言えないという研究の限界はありながらも(*4)、そうした食生活を営んでいる人ほど、大腸がんや循環器疾患、糖尿病のリスクが高い傾向がありました(*5-9)。

 また、日本人の食生活を対象にした研究では、肉を多く含む食事を営んでいる人ほど、死亡率や病気のリスクが高かったり、低かったりという一筋縄ではいかない結果も出ています(*10-12)。

加工肉のリスクを指摘する研究は多い

 肉の研究においては、研究対象者が肉を摂取する量が少ないために、疾患との関係をはっきりと見てとれない実情があるなど、研究上の限界はありながらも、総合的に考えて、加工肉の摂取については多くの研究が悪影響を示唆しています。赤肉や肉全般については、集団や疾患によって結果が異なり、判断しにくく悩ましいといったところです(*13,14-17)。   

 それでも、WCRF(世界がん研究基金)やIARC(国際がん研究機関)の研究によると、赤肉と加工肉と大腸がんについては比較的、はっきりとした関係が見られます

 国立がん研究センターでは、このような結果や肉の摂取量の動向を受けて、①日本人の平均的な摂取範囲であれば、赤肉や加工肉はリスクとなる可能性はないか、あっても少ない(*18)、②しかし欧米より少ないとはいえ、アジア・日本での肉の摂取量は増えている(WHO推 奨の肉の摂取量週500gに対して、日本の研究でも多いグループでは週400〜450g以上を摂取)(*19)、③日本でも大腸がんは戦後欧米並みに増加という理由から、「日本人の食生活でも、肉類を極端に多く食べるような習慣は、大腸がんのリスクが高くなる可能性がある」(*20) と述べています(*20,21)。ちなみに、日本では大腸がんは2019年で死亡数第1位、2021年で死亡数第2位のがんです(*22)。

 食べる肉の種類には気をつけましょう

(本稿は、林英恵著『健康になる技術 大全』より一部を抜粋・編集したものです)