中国で大騒ぎとなったPM2.5問題。今年1月12日、北京ではPM2.5の数値が、24時間平均で1立方メートルあたり456マイクログラムにまで跳ね上がった。国が指定する基準値は35マイクログラム、その13倍である。北京だけではない。この1月だけで中国の30都市で合計4回のスモッグが発生し、深刻な大気汚染が問題となった。
車両増による排気ガス、厳冬による家庭用ボイラー使用の増加、その際の石炭消費の増加、工場からの汚染物質の排出、そして当時の気象条件など、それらがこのスモッグ発生に結びついたと言われるが、なぜ1月に集中して起きたのか、その原因はいまだ明らかになっていない。
観測データ公開すら
緒に就いたばかり
そもそも中国では、2011年から公害問題への関心が高まり、PM2.5に関心が持たれるようになっていた。翌年、政府は北京や天津、また長江デルタ地帯や珠江デルタ地帯を中心に粒子状物質の観測を強化し始めたが、肝心なデータが公表されず、国民をさらなる不安に陥れていた。
今でこそ、上海、南京はデータ公開に踏み切ったが、上海、南京の過去3年(08~11年)の平均値はそれぞれ1立方メートルあたり63マイクログラム、53マイクログラムと、WHO(世界保健機構)の年平均基準(10マイクログラム)をはるかに超えている。中国500都市でWHOの基準を下回る都市は1%に満たないとも言われ、NASA(アメリカ航空宇宙局)の観測では地球上のPM2.5による汚染は、中国の華北・華東地区が最もひどい状況であることを告げている(参考:NASA)。
筆者は、浙江省杭州市郊外、湖南省長沙市、内モンゴル自治区オルドス市に住む友人に、それぞれ電話をかけて聞いてみた。「そこから太陽が見える?」との問いに、苦笑まじりの「没有(見えないよ)」という回答だ。3都市とも、現地の空気は「いつも灰色に濁っている」という。
隣国中国の大気汚染は相当ひどい状態にある。問題は今後、この大気汚染が改善するかどうか、だ。