「深謝」は、このプラスとマイナスの両方の意味で使えます。

 もちろん、感謝を表したければ「ありがとうございます」「感謝いたします」、謝罪の意味ならば「申し訳ありません」「謝罪いたします」でいいのですが、「深謝」を使うことで、こちらの強い気持ちを伝えると同時に、かしこまった印象を与えることができます。

 似たような意味で「多謝」という熟語があります。しかし、「多謝いたします」「多謝です」というのは、こなれた表現ではないので避けたほうがいいでしょう。せいぜい、知人に軽く礼を言うときに「助言多謝」「協力多謝」、知人に失礼を軽く詫びるときに「暴言多謝」といった使い方をする程度が無難です。

改まった場面で使う感謝のことば
「ひとかたならぬ」

図_改まった場面で使う感謝のことば「ひとかたならぬ」画像提供:本書より 拡大画像表示

 挨拶や文章など、改まった場面で使われることが多いことばです。「ひとかた」とは漢字で「一方」と書いて、「ちょっとしたこと」「ひととおりのこと」「程度が普通のこと」を意味します。

 それに、古めかしい「なり」という断定の助動詞がついて「ひとかたなり」(ひとかただ)になって、さらにそれを打ち消して「ひとかたならぬ」(ひとかたではない)というのですから、程度が普通ではなく、「なみたいていではない」「非常な」「大変な」という意味になるわけです。

 例文にもあるように、主にお礼や感謝を述べるときに、相手のありがたい行為や言動を強調するために使われます。

 似た意味のことばに「なみなみならぬ」があります。程度が普通である点では、「一方」も「並」も同じですから、「並々なり」を打ち消した「並々ならぬ」も同じような意味となります。ただし、「なみなみならぬ苦労に直面しました」のように自分に対しても使えるのに対して、「ひとかたならぬ」は他人に対してのみ使うのが大きな違いです。

謝罪・恐縮・拒絶のことば
「汗顔の至りです」

図_謝罪・恐縮・拒絶のことば「汗顔の至りです」画像提供:本書より 拡大画像表示

 携帯電話やメールで使う絵文字で、額から汗を流している絵があります。まさに、このときの気持ちが「汗顔」です。ひどく恥ずかしいと感じたときに顔が真っ赤になって汗が出てくるのは、今の人も昔の人も変わりません。ここから、「顔から汗が出るほど恥ずかしい様子」という意味で「汗顔」が使われるようになりました。

 通常は、「これ以上のことはない」という意味を示す「至り」をつけて、「汗顔の至り」という形で使います。「もう、本当にこれ以上お恥ずかしいことはありません」という意味であり、自分の失敗や間違いに対して謝罪をするとき、お詫びのことばとともによく使われます。