女性のビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

社会に出てから、自身のボキャブラリーのなさに打ちひしがれた経験はないだろうか。ありきたりな感謝の言葉しかメールで打てなかったり、謝罪の言葉も「お詫び申し上げます」のほかに思い浮かばなかったり……。そんな自分から脱却し、自分の心情をより丁寧に相手に伝えられたとき、社会人としての成長を実感できるはず。そこで身につけたいのが、大人の語彙力だ。社会に出て語彙を増やすメリットと、感謝と謝罪の言葉をピックアップした。本稿は、高村史司『社会人に絶対必要な語彙力が身につく本』(大和書房)の一部を抜粋・編集したものです。

今ほど語彙力が
問われている時代はない

「文は人なり」ということばがあります。文章を見れば、それを書いた人の性格や考え方がよくわかるという意味です。もちろん、丁寧な言葉づかいかそうでないか、文章がわかりやすいか難解かによって、その人となりが理解できることはすぐに見当がつくことでしょう。

 しかし、意外に見落とされがちなのが、ことばの選び方です。同じようなことを言うのであっても、似た意味を持つさまざまなことばのなかからどのことばを選ぶかに、その人の人柄や思いが表れます。

 ところが、どうも近年は「ことばを選ぶ」行為がおろそかになっている気がします。私たちが日常的に使う語彙(ボキャブラリー)が減少しており、とくに喜怒哀楽の感情を示すことばがワンパターン化している印象があります。

 感動したときは「ハンパない!」「エモい!」、腹が立てば「ムカつく」「ウザい!」、よさそうだと「ジワる」「よさげ~」で片付けている人のなんと多いことか。

 若い人たちだけではありません。中高年だって、よく聞いていると「すごい」「かわいい」「いいね」の連発。こんなことばを毎日使い回しているのが現状ではないでしょうか。「ありがとう」もそうです。感謝の気持ちを述べるのは悪いことではありませんが、いつでもどこでもどんなケースでも「ありがとう」「ありがとうございます」だけで済ませていないでしょうか。その底には、「こう言っておけば無難だろう」という気持ちが透けてみえます。

 たとえば、相手によっては「恩に着ます」「痛み入ります」「深謝いたします」などと言ってみればどうでしょうか。月並みでない感謝のことばを耳にして、相手は「おや?この人は本当に心から感謝しているんだな」と強い印象を受けることでしょう。さらに、相手との関係によっては、「ひとかたならぬご好意を賜り」「過分のお引き立て」などのことばを付け加えることで、より強い思いが伝わるはずです。

 このように、その場その場でしっくりくることばを選ぶことができれば、相手に対して自分の気持ちを正確に表現できるわけです。

 そこで大切になるのが語彙力です。それは、数多くの語彙を身につけて、臨機応変に使える能力です。語彙力を高めることは、ことばの選択肢が増えることを意味し、それだけ自分の気持ちを細やかに表現したり、世界をさまざまに表現したりできるわけです。それが人間関係をスムーズに運ぶことにつながり、ひいては人生を豊かにすることになるのです。