「病気になりたくない」というのは、すべての人に共通する願いです。しかし、病気にならないためにどんな行動をとるべきなのかは「よくわからない…」という方が多いのではないでしょうか。
そんななか、「科学的に正しい」健康習慣の身につけ方を明かした、公衆衛生学者・林英恵さんの最新刊『健康になる技術 大全』が話題を呼んでいます。最先端のエビデンスをベースにした「健康に長生きする方法」を伝授する本書に、読者からは「健康関連本としてはブッチギリのベスト」「一家に1冊置いておくべき」と激推しの声が続々と届いています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、健康のために良い休みの取り方を明かします 。
監修:イチローカワチ(ハーバード公衆衛生大学院教授 元学部長)
休暇不足の人は、心臓病になるリスクが上がる
長い目で考えると、休暇を取ることは健康に特に重要だという結果が出ています(*1)。フラミンガムハートスタディという、ボストン郊外の大規模な疫学研究(特定の病気とその原因を探る研究)では、将来の心筋梗塞や心臓病などの循環器系疾患で死亡する原因になりうるものを明らかにするために、20年間同じ対象者を追って、研究が行われました。
その結果、働いている女性においても主婦においても、休暇不足の人は、心筋梗塞もしくは心臓病などの循環器系疾患で死亡する可能性が高くなる傾向が見られました(*2)。
また、35歳から57歳までの1万2000人以上の男性を対象にした別の研究では、9年間の追跡の結果、休暇を頻繁に取った人は、定期的に休暇を取らない人よりも心臓病と診断される確率が29%低く、死亡する確率も17%低いことがわかりました(*3)。収入などでの違いが出ないようにその分を考慮しても、このような結果が出ています。
休暇の「具体的な内容」も重要
このような休暇の取得と、健康、特に心臓系の疾患や死亡との関連が出てきた理由として、休暇がストレスを減らす役割をする可能性があること、家族や友人とのふれあいや、体を動かすことを通じて心身ともに回復させる機能があるのではといわれています(*3)。
休暇の内容も重要なようです。オランダでの研究によると、休暇の旅行中にとてもリラックスできた人は、休暇後最大で2週間幸せな気持ちで過ごせる結果が出ています(*4)。この2週間を、たった2週間ととるか、2週間も幸せな気持ちが続くととるかは人によって違うことでしょう。休暇前の幸せの度合いは、休暇をとる人の方が高く出ました。
一方、休暇中の旅行で、渋滞で混んだり、知らない土地に行くことに不安を感じたりなど、それ自体が何らかのストレスとなってしまうと、休暇後に働く時に、よけい負担になってしまうとの結果も出ています。
この場合、休暇によるストレスが良くないだけで、休暇自体は、健康にも幸せにもつながるものと考え、イライラしないような計画を立てることを勧めています。良い思い出に残るようなものは、ストレスなしでの旅行となればその後の幸せを導くものになりうるでしょう。
休みの量や質を確保する工夫が大切
なかなか休みが取りにくい、また休暇中でもメールをチェックしがちな日本人にとって、休暇をとることは難しいかもしれません。
でも、1週間まとまった休みがとれなくても、金曜や祝日の前後に合わせて休暇を取る、休暇中はメールを自動返信にして返信できないことを知らせるなど工夫をすることで、休みの量や質を確保するようにしましょう。
「休むことも仕事」と考え、心と体を休めるための時間を取ってもらえたらと思います。
(本稿は、林英恵著『健康になる技術 大全』より一部を抜粋・編集したものです)