受験や応援ソングとしても人気に
「AMBITIOUS JAPAN!」誕生秘話

 東海道新幹線の品川駅開業後、利用者実績は前年度を上回り絶好調、移動シェアを飛行機から奪い返すことに成功した。キャンペーンの評判は良く、「新幹線開業40周年(04年)まで」、「愛・地球博開催(05年)まで」と継続され、当初の予定を変更して3年間も続いた。

 そしてキャンペーンソング「AMBITIOUS JAPAN!」もオリコンランキングで初登場1位を記録し、TOKIOは同曲で何度もNHK紅白歌合戦に出場するなど大ヒットとなった。また、「突き進めば希望(のぞみ)はかなう」といった歌詞が受験生に響き、応援ソングとしても支持を得るように。各駅の構内放送で頻繁に曲を流したところ、新聞の投書で「受験シーズンが終わるまで流してほしい」という要望が上がるほどだったという。

 05年10月のキャンペーン終了後、車体側面の巨大ステッカーは撤去されたが、メロディーチャイムは継続となり今日に至る。他のキャンペーンやTOKIOの転機をも乗り越え、20年にわたって長く愛された。

 ちなみに、鉄道のメロディーチャイムは評判しだいですぐ変わることもある。実際に東海道新幹線でも、世界的な作曲家・黛敏郎氏に依頼したチャイムは、1968年の導入から4年しか使われていない。コード進行が独特で、評判がいまひとつだったようだ。

 ヒット曲をモチーフとした鉄道のメロディーチャイムが、ここまで広く定着した事例は珍しい。7月20日の終了を目前に、JR東海の関係者も「これほど惜しまれるとは思わなかった」と反響の大きさに驚いているという。

 キャンペーンソングとして楽曲「AMBITIOUS JAPAN!」が誕生した経緯は、いかにもJR東海らしいものであった。経営者としての辣腕(らつわん)ぶりから「JR東海の皇帝」などの異名を持つ葛西敬之会長(当時)が人脈をフル活用して、著名作詞家のなかにし礼氏に楽曲制作を依頼したのだという。まさに葛西会長のトップダウンが、功を奏したというわけだ。

JR西日本のメロディーチャイム
「いい日旅立ち・西へ」は継続

 なお、東海道新幹線の車両のうち、メロディーチャイムが変更となるのはJR東海の保有車両のみ。JR西日本が保有する編成のチャイム「いい日旅立ち・西へ」は継続される。JR西日本によると、「現在のところ変更の予定はない」ということだ。

 東海道新幹線の編成のうちJR西日本の保有車両は2割ほど。車体側面の「JR」ロゴの色(オレンジならJR東海、青ならJR西日本)で、意外と簡単に見分けられる(ただし、どの便にどの編成が来るかは決まっていない)。出張のビジネスパーソンだけでなく、夏休みの帰省や行楽で新幹線を利用する人は、この機会にメロディーチャイムを聴き比べてみてはいかがだろう。