新幹線のライバルはANA・JAL
サザンやSMAPにTOKIOで対抗!

 03年7月から始まったAMBITIOUS JAPAN!キャンペーンの目的は、同年10月に控えた東海道新幹線の品川駅開業と同時に実施された、「のぞみ」大幅増発のPRにあった。当時のJR東海関係者の談話によると「通常のキャンペーンとは(予算の)ケタが違う」という、十数億円が投じられたそうだ。

 思い切った宣伝を展開した背景には「新幹線vs飛行機」の競争激化があった。飛行機は1990年代から本格化した規制緩和で利便性を飛躍的に高め、全体の1割程度だった東京~大阪間での移動シェアを倍増させていた。大阪だけでなく、東京~岡山や広島間でも着実に利用客を奪っていた。

 じりじりと守勢に立たされた新幹線は、巻き返しのために渾身(こんしん)の一手を打つ。それが、羽田空港へのアクセスがいい地域からの出張客需要を奪い返せる「品川駅開業」と、飛行機と違って「待たずに乗れる」という強みをアピールできる「のぞみ大増発」だったのだ。

 そしてその一手を大々的にPRする必要があったが、03年当時の航空各社のキャンペーンは手強かった。JALがサザンオールスターズやメジャーリーガーの松井秀喜選手、ANAがSMAPを起用していた(SMAPの「世界に一つだけの花」の大ヒットはこの年)。ここでJR東海は、ジャニーズの人気グループTOKIOにキャンペーンを託した。

 当時のTOKIOは、サザンやSMAPほどの国民的大スターではなかったものの、代表番組「ザ!鉄腕!DASH‼」が安定して高視聴率を取っていた。番組内では特に「DASH村」という企画が人気で、当時は「ヤギの八木橋くん一家」を頻繁に見たと筆者は記憶している。DASH村では汗水たらして作業に励むTOKIOのメンバーが、AMBITIOUS JAPAN!キャンペーンでは一変してスーツに身を包んだ姿は、東海道新幹線を利用するビジネスパーソンの目にもクールに映ったはずだ。

 先に述べた通り、「品川駅開業」「のぞみ増発」は飛行機に対抗する戦略でもあり、このキャンペーン自体が「ガチンコで競争していくぞ!」といった、JR東海の「アンビシャス」(野心)だったともいえるだろう。

 こうして「AMBITIOUS JAPAN!」キャンペーンは大成功を収めることに。そして、ビジネスパーソンだけでなく意外な客層にも響き、幅広い層から支持を得ていった。