わずか15年半しか営業できなかった上に、撤去に約130億円の費用を要する愛知県小牧市郊外の宅地の一角にある、「ピーチライナー」こと桃花台(とうかだい)新交通・桃花台線。人口230万人を擁する名古屋市の30km圏内で、巨大なニュータウンの足となるはずだった鉄道は、なぜ短期間でその使命を終えたのか。(乗り物ライター 宮武和多哉)
開業15年で廃止の桃花台新交通「ピーチライナー」
巨大ループ橋が間もなく撤去
愛知県小牧市郊外の宅地の一角にある、「ピーチライナー」こと桃花台(とうかだい)新交通・桃花台線の「巨大ループ橋」の撤去が、間もなく行われる。
人口2.2万人を擁する「桃花台ニュータウン」の足として建設されたこの鉄道は、ほぼ全線でコンクリートの高架橋の上を走行していた。運転席が片端にしかない車両は、終点の桃花台東駅で乗客を降ろした後、高さ約20m、直径約10mの巨大なループ橋をひと回りして方向を変えていた。
2006年にピーチライナーが全線廃止となった後も、設備の撤去を巡る費用分担の議論が定まらず、高架や駅などのほとんどが放置されてきた。近年ようやく撤去作業が本格化したものの、周囲を高層住宅に囲まれたループ橋の解体が始まるまでに、撤去の決定から8年もの歳月を要した。
23年春には鋼製橋桁がクレーンで地上に下ろされ、残された「C」の字状のカーブの部分も、間もなく撤去されるとのこと。現在では記念撮影に訪れる人も多いという。
ピーチライナーの開業は1991年。15年半しか営業できなかった上に、撤去に約130億円の費用を要すること、そもそも鉄道建設が誤算だったことは明らかだ。人口230万人を擁する名古屋市の30km圏内で、巨大なニュータウンの足となるはずだった鉄道は、なぜ短期間でその使命を終えたのか。