韓国で長く読まれている勉強の本がある。1冊は、日雇い労働をしながら4浪の末、ソウル大学に首席で合格した『勉強が一番、簡単でした』(70万部)。もう1冊は、中高生の98.4%が「勉強をしたくなった」と回答した『勉強が面白くなる瞬間』(50万部)。計120万部を超える大ベストセラーがついに日本で出版される。なぜ、受験大国・韓国で読まれたのか? そして、私たち日本人は何を学ぶべきか? 2冊の共通点を探ると共に、勉強の本質に迫る。
韓国の勉強本には、日本の勉強本に絶対ある「〇〇」がない!?
韓国の書店に足を運んだことがある。勉強法のコーナーには、日本人著者による勉強法が棚にびっしり積まれていた。韓国ほどでもないが、日本も受験社会。受験に限らず、試験に合格するための日本発の勉強法は、韓国でもニーズがあるようだ。私が韓国講演から戻ってきてから執筆した記事「なぜ、『ずるい暗記術』は韓国で電子書籍総合1位をとれたのか?」に、その様子が記されている。
あれから何年、たったのだろうか。まさか、令和になって、韓国の勉強本2大ベストセラーを担当するとは……。きっかけは、私が担当した勉強本が、韓国で多く翻訳されていたことだ。翻訳担当から逆提案を受けたことから始まる。
ハングルが読めるわけではないので、査読をお願いした。いまや日本で10万部を超えるベストセラーとなった『勉強が面白くなる瞬間』だ。
中身を拝見すると、私が著者に求めるノウハウらしきものが見当たらない。勉強できなかった生徒が、どのように勉強し、ソウル大学合格に至ったかの「勉強の型」がないのだ。
「日本の読者が手に取るのか?」
こんな疑問が浮かびながらも、13歳から18歳を対象にした中・高等学校の生徒378人の98.4%が、この本を読んで「勉強したくなった」と知る。
「気になる」
当時、日本でも中学生向けの勉強本が売れていた。もちろん、読者対象はその親御さん。コロナ禍で学校に行けない、塾に行けないなか、独学で勉強をしなければいけない時期でもあった。一番大事なのは、テクニックではない。モチベーションだ。
2022年5月、発売。瞬く間にベストセラーの仲間入りを果たす。そして、2023年7月、『勉強が一番、簡単でした』が発売される。
『勉強が一番、簡単でした』の存在は、冒頭に紹介した韓国講演時に、韓国の新聞記者から教えてもらったことがある。
冒頭で紹介した記事には、こう書いてある。
『勉強が一番、簡単でした』の存在を詳しく知らなかったからこうまとめたが、正しくは、「日雇い労働者が4浪の末、ソウル大学に首席合格し、そののち、司法試験を受けて弁護士になった」だろうか。
日本でも、韓国の大学試験の様子がニュースになるほど、過熱ぶりはよくわかる。独学で乗り越えられるほど、簡単なイベントではない。
2冊の共通点は、著者の環境こそ違うものの、将来を悲観し、死に物狂いで勉強し、不可能と思われていたことを成し遂げたことにある。この努力の仕方が生半可ではない。皆さんの周りに、こんな努力をしている人がいるだろうか。2人の姿に触れたとき、何らかの行動に移っている自分に驚くことでしょう。
しかも、属人的ではない。むしろ、「私ができたのだから、みんなできるはずだ」と背中を押してくる。
おそらく、読んだ後、共通した答えが出てくるわけではない。ただ、行動指針が芽生えているはず。あとは自分を信じて、走っていけばいい(「歩む」では足りないことは、2冊がいやでも教えてくれる)。
まるで著者が目の前にいるような、もしくは、読者が著者になったかのような、ストーリーに没入していく感覚は、一読の価値がある。韓国エンタテインメントさながらの喜怒哀楽の揺さぶりに身を任せながら、心のなかに熱いものを感じてみてはいかがだろうか。
と、私が伝えられるのはここまで。異色の勉強本でありながら、特別なテクニックを得られたわけでもないのに、勉強のモチベーションが劇的に上がる2冊。そして、なかなか下がらない。
もし、著者と同様に、将来が不安であるなら、一読してほしい。読後、答えを持っているあなたに出会えることを楽しみにしています。
(書き手=編集部・武井康一郎)