日本の高校から「海外名門大学に合格」した学生の英語勉強法に8つの共通点高校まで日本語で日本の教育を受けながらそのレベルにまで英語力を伸ばしていくのに、何か秘訣はあるのでしょうか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

海外の大学に進学する人たちといえば、帰国子女やインターナショナルスクール出身者を思い浮かべるかもしれません。けれども最近は、高校まで日本の学校に行き、そこから海外の大学に進学する人たちが増えています。彼らは、子どものころに特別な環境に置かれていたわけでも、裕福な家庭で育ったわけでもありません。では彼らは、日本の教育の枠組みのなかで、どう英語力をつけていったのでしょうか。教育ライターの加藤紀子さんの著書『海外の大学に進学した人たちはどう英語を学んだのか』(ポプラ新書)では、日本の高校から海外の大学に進学した人たちに取材をしながら、さまざまな文献にあたり、英語学習の秘訣をまとめました。今回は、そのなかから、2つの秘訣を紹介します。

日本の学校に通いながら海外の大学に進学した人たち

 美しい発音で流暢に英語を話す人を見て、同じ日本人なのにどうやったらあんなふうになれるのかと羨望の眼差しを向けたことはありませんか。あるいは親の立場なら、やはり早くから英語を習わせた方がいいのか、早く始めないと手遅れになるのではないかという不安に駆られる人もいるかもしれません。

 幼少期から英語に触れることに効果は期待できるものの、英語を習得するのに「手遅れ」はないといわれます。でも本当に早く始めなくても、インターナショナルスクールや留学、あるいは英語の学童保育のように、幼い頃から英語にどっぷり浸かる環境にいなくても、高い英語力は身につけられるのでしょうか。

 その手がかりとなるのは、日本で小・中・高と教育を受け、そこで身につけた英語力で海外の大学へと進学した人たちの勉強法です。彼らはその英語力で海を渡り、現地の学生と肩を並べて英語で授業を受け、学業をおさめています。

 海外の大学に進学する人たちといえば、元々高いレベルで完成した英語力を持つバイリンガルや帰国子女、インターナショナルスクール出身者などを思い浮かべ、「ずっと日本に生まれ育った自分には無理だ」とはなからあきらめてしまう人がまだまだ多いと思いますが、実際にはそんな人たちばかりではありません。

 高校まで日本語で日本の教育を受けながらそのレベルにまで英語力を伸ばしていくのに、何か秘訣はあるのでしょうか。

 その秘訣を探るため、今回は主に海外大学進学には実績のない公立高校出身者にインタビューを行いました。そして彼らの経験談をまとめていくうちに、次の8つの共通点を見出すことができました。本記事では、そのうちの2つの秘訣を紹介したいと思います。

(1)自分に合った方法で単語力を爆上げする

 英語力を上げるぞというモチベーションが確立したところで、一番の大きな壁は単語力です。「単語を知らないと話にならない」というのは今回のインタビューで全員一致の見解です。

 日本の大学受験に必要な単語数は4000~6000語と言われていますが、英語圏の大学に行く場合、最低でも8000語以上、レベルの高い大学を目指す場合には1万3000語以上が目安です。生物や化学、歴史に関する文章など、現地の学生と同じレベルで学術的なトピックに対応できる語彙力が求められるため、どうしても難易度は上がります。

 では、どうやってこの膨大な単語を覚えるかですが、これは人によってさまざまというのが結論です。というのも、人によって得意な学習方法は異なるため、自分に合った覚え方をするのが一番だからです。

 ちなみにこれには、ハーバード大学の心理学者であるハワード・ガードナー博士が提唱した「多重知能理論」が参考になります。ガードナー博士は、人間の持つ知能は8種類あり、人によってある知能が強かったり、弱かったりするので、その人の特性に合わせて得意な方法で学習すれば、その人の持つ能力が大きく引き上げられると唱えています。この理論は世界各国の教育現場やビジネスの世界でも活用されています。8種類の知能をここで紹介しましょう。

*言語的知能:文章を書くことや言葉に興味がある。読書好き。
*論理・数学的知能:数量に興味があり、分析するのが好き。科学的なことに対する理解が早い。
*空間的知能:言葉で説明されるより、絵や図、写真などビジュアル重視で説明された方が理解しやすい。
*音楽的知能:歌や楽器演奏が上手で、音を聞き分けられたり、メロディをすぐに覚えられたりする。本や教材を音読や歌にするなど、声に出すと学習がうまく運ぶ。
*身体運動的知能:実験や道具を使うなど、実際に手や体を動かしながら集中させる。
*対人的知能:1人でやるより他の人と一緒にやる方がはかどる。
*内省的知能:1人でじっくり考え、困った時も自分で解決できる。
*博物的知能:特定の物事に詳しく、図鑑好き。観察力がある。

さまざまな英単語の学習法には一長一短がある

 例えば「書く」ことが好きな言語的知能と「動かす」ことが得意な身体運動的知能が両方強いタイプは、「手を動かして単語を書きまくって覚える。単語帳を1ページずつ、全部覚えられたらそのページを破いて捨てる。全部なくなったらまた新しいのを買い直し、3~4冊つぶす」といった方法を選んでいますし、論理・数学的知能が強いタイプは、「接頭辞や語源といったパーツに注目してそのニュアンスを推測し、芋づる式に単語を覚える」という語源学習で進めています。

 あるいは空間的知能が強ければ、ビジュアルやイメージとして単語を捉えるのが向いているので、「毎日単語帳1冊全部をざっと眺める」「覚えにくい単語はGoogleの画像検索で出てきた絵のイメージで覚える」。言語的知能と空間的知能の組み合わせなら、「自分の周囲にあるものに英語を書いた付箋を貼っていくように覚える」「身近なヒトやモノで印象深い例文をつくる」といった方法が有効のようです。

 ただし、第二言語習得の専門家である立教大学異文化コミュニケーション学部の中田達也准教授によると、こうしたさまざまな英単語の学習法には一長一短があり、ひとつの方法だけでは使用できる単語に制限があったり、深い語彙知識が得られなかったり、視覚的な勉強だけでは音の練習が足りず、聴覚型だと単語の綴りが身につかなかったりするなど、「あらゆる語彙のあらゆる知識を結果的に習得できるような完璧な学習法は存在しない」といいます。自分にフィットする方法を活かしつつ、それでカバーしきれない部分は別の方法で補っていく必要があることは知っておくといいでしょう。