韓国で長く読まれている勉強の本がある。1冊は、日雇い労働をしながら4浪の末、ソウル大学に首席で合格した『勉強が一番、簡単でした』(70万部)。もう1冊は、中高生の98.4%が「勉強をしたくなった」と回答した『勉強が面白くなる瞬間』(50万部)。計120万部を超える大ベストセラーがついに日本で出版される。なぜ、受験大国・韓国で読まれたのか?そして、私たち日本人は何を学ぶべきか?2冊の共通点を探ると共に、勉強の本質に迫る。
ノウハウ以前の問題を解決する
勉強本に「ノウハウ」は必要。これは、今までもこれからも編集方針が変わることはないでしょう。
『ずるい暗記術』なら、「答えを先に見て、理解は後回しにする」、徹底的に時短を求めた勉強法。
『脳にまかせる勉強法』なら、「脳の特性を生かし、インプット&アウトプットを高める」、脳の役割を最大限に生かす勉強法。
『7日間勉強法』なら、「試験日に最大のパフォーマンスを発揮する」、試験に合格するための、超効率を根差した勉強法。
著者の属人的な内容にするのではなく、体系化し、誰でも使える武器に昇華する、これが最低限の決まり事。ただ、『勉強が面白くなる瞬間』も『勉強が一番、簡単でした』も、上記のような「型」にまとめられない。
結果以前に、一度押したら、二度とOFFにならないような勉強のスイッチを与えるのが2冊の役割なのかもしれない。勉強をする動機は人それぞれなのに、この2冊を読むと、わけもわからず勉強したくなるのだから、不思議でしようがない。
親から言われて勉強する人なんて、なかなかいない。いるなら、よほどの親孝行の人物だろう。言われてやったこところで長続きしないし、反抗期を迎える頃には、勉強をやることの必要性を感じていても、言われたら反発したくなるのも確か。そうであるなら、学校はもちろん、塾の役割が確立しているのも納得できる。
本を読んで勉強したくなった、という記憶は10代の私にはない。
この2冊を読んだ後には、「説明はできないけど、あの子が好きだ」「なぜかわからないけど、この食べ物が好き」、無意識下にある直感めいたものが、「勉強したくてたまらない」「勉強しない自分が嫌だ」と思わせるのだろう。
勉強の本質を教えてくれる
勉強とは何か、それを丁寧に教えてくれる人はいないが、この2冊は「勉強の本質」を教えてくれる。
『勉強が面白くなる瞬間』には、人と比較する無意味さを教えてくれる。ライバルは過去の自分であると。『勉強が一番、簡単でした』には、越えるべき一番高い山は「自分自身」であることを。勉強しないを選択するのもまた、自分であると。
なりたい自分になるために自分が否定する必要はないし、そのために勉強していけば、だんだん面白くなっていくとも語られる。
勉強の面白さをいまここで著者の代わりに語ることはできないが、これに気付くだけでも、一読の価値はある。
(書き手=編集部・武井康一郎)