海外スタートアップが「東証への上場」に関心、誘致の鍵を握るスキームを解説Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 今、海外スタートアップが東京証券取引所での上場に関心を示している。日本はこの機会を逃すことなく、外国企業の上場誘致を加速し、日本の国際金融センターとしての地位向上につなげるべきだ。その有効なツールとなるのが、信託上場スキーム「JDR」である。これを活用するとともに、日本での上場のメリットに関する情報発信や、誘致のための働き掛けを積極的に進めることで、近い将来、日本の株式市場が外国企業でにぎわうことを期待する。

関心は高いが実績の乏しい外国企業の東証上場

 ここ数年、海外スタートアップの東証上場への関心が高まっている。そのきっかけは、2017年にシリコンバレーのスタートアップが東証マザーズ(現グロース)に上場したことである。その後、シンガポール企業も2社上場し、その流れを確かなものにした。

 東証は今も世界有数の株式市場であり、先進的な市場といわれる香港証券取引所やシンガポール証券取引所と比べても優れている点が多い。特に、新興企業向け市場で比較すると、市場の性格に差異はあるものの、社数、時価総額、売買代金のいずれを見ても東証グロースが大きくリードしている(図表1)。

 日本にいると気付きにくいが、海外、特にアジア企業では東証上場が有力な選択肢となってきている。その理由は、東証の市場としての優位性に加えて、幅広い技術を有する日本企業との連携、政治経済が安定した日本からのグローバルビジネスの展開など、日本の特性を期待したものである。

 22年4月から12月にかけての東証における海外投資家の株式売買代金シェアは、プライム61%、スダンダード44%、グロース38%と国際化が進んでいる。それに対して、東証上場企業のうち外国企業は6社にとどまり、全上場社数に占める比率も0.15%に過ぎない。

 国際取引所連合によれば、22年末における外国企業上場比率は、ニューヨーク証券取引所やナスダックで4分の1近く、シンガポール証券取引所では3分の1を超える。日本との差は極めて大きく、国が目指している国際金融センターを実現するためには、東証の外国企業上場社数を増やすことが欠かせない。外国企業の上場増加は市場自体を活性化するにとどまらず、さまざまな専門人材の集積につながり、国際金融センターとしての厚みが増すはずである。