長年官民共に米国の独壇場といわれていた宇宙開発。だが、ここへきて日本企業の動きが活発化している。世界で唯一の技術を持つ有望スタートアップのIPO(新規株式公開)や、ベンチャーキャピタル(VC)と事業会社からの投資が急拡大しているのだ。すでに、有望スタートアップといち早くつながろうとするひそかな陣地争いも勃発していた。なぜ日本企業が今宇宙事業にまい進しているのか。そして宇宙ビジネスで、今一体何が起こっているのか。特集『来るぞ370兆円市場 ビッグバン!宇宙ビジネス』(全13回)の#1では、自動車産業と同規模に成長するという説まで飛び出す宇宙ビジネスの深層に迫る。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
初上場宇宙スタートアップが示す
宇宙ビジネスのパラダイムシフト
「われわれは歩み続けます」
4月26日深夜、お台場の日本未来科学館。宇宙スタートアップのispaceが行った、民間企業初となる月着陸ミッションのライブビューイング。深夜にもかかわらず100人以上もの投資家や報道関係者が集まり、ライブ映像を見守った。
残念ながら、ランダー(着陸機)は最終段階で月面に着陸できないという結果に終わった。しかし、最後にプロジェクトを総括する袴田武史・ispace最高経営責任者(CEO)が冒頭の言葉を述べると、会場からは拍手が起きた。
そして、会場での社員一同のおそろいのユニフォームにこそ、宇宙ビジネスがビッグバンのように急拡大している様が見て取れる。ジャケットの袖に日本航空(JAL)や住友商事、三井住友銀行など、プロジェクト支援企業9社のロゴがきらびやかに並んでいたのだ。
ispaceは、最近の「民間宇宙ビジネスのヒーロー」の象徴ともいえる存在だ。
海外を含むベンチャーキャピタル(VC)や事業会社から広く出資を集め、2022年7月までに268億円の資金調達を行った。4月12日には東証グロース市場に宇宙スタートアップとして初めて上場を果たした。着陸失敗翌日に株価は下げたが、今は上場直後の水準に回復を果たしている。
こんな有力宇宙スタートアップが、ほかにも日本から続々と登場している。しかも、そのうちの多くが数年以内に上場も目指しているのだ。すでに数社は宇宙事業で実績を作り100億円以上の資金を調達した。
特徴的なのが、VCのみならず大手商社や製造業といった事業会社からも出資を獲得していることだ。これは海外の宇宙スタートアップにもあまりない、日本独特の盛り上がり方だ。
わずか数年で宇宙ビジネスは膨れ上がり、そのチャンスに乗り遅れたくない企業が群がる。ついには半導体産業を超え、自動車業界に次ぐほどの巨大産業になるという予測まで出てきたほどだ。
繰り返すが、世界オンリーワンの技術で数百億円を集める日本企業が続々と登場している。「米国に比べて日本は遅れている」という認識のままでは、乗り遅れてしまうだろう。
宇宙市場の“ビックバン”を、どの企業が有望でどの大手企業が出資しているのかなど、具体的企業名と実額とともに見ていこう。