日本の給料が上がらない。言い換えれば、1人当たりGDPが上がらない。これについてはさまざまな議論がなされてきたが、その理由は、資本ストックが足りないからである。諸外国との比較データを用いて解説する。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)
1人当たり資本ストックとGDPの
主要国における推移
図1は、日本経済団体連合会の鈴木章弘研究員の示唆により、G7諸国と韓国の1人当たり実質GDPと1人当たり資本ストック(どちらも2015年実質ドル)を示したものだ(以下、煩雑さを避けるために、単に資本ストック、GDPとする)。
図からは、フランスを除いては、資本ストックが増大するにしたがってGDPも増大するという関係が明らかである。
ここで言う資本ストックには、民間の資本ストックだけでなく、公共資本ストックも住宅資本ストックも研究開発資本も含まれている。なぜ住宅資本も入っているかと言えば、GDPには自宅を借りていると仮想した家賃(帰属家賃)も含まれているからである(普通に払っている家賃は、当然、付加価値としてGDPに入っている)。
また、韓国の資本ストックは名目の純固定資産から私がかなり無理に実質化しているので、あまりあてにはならないことを白状しておく。
フランスの資本ストックは1980年代からほとんど伸びていないのにGDPは増大している(この理由については後述)。しかし、それ以外の国では、資本ストックとGDPは連動している。
もちろん、資本ストックが同じでも、不況の時にはGDPは低下する。1992年、2000年、2009年、2019年には低下している。