中古アパートを35万円で「就活が成功する物件」に変え、賃料3000円アップを実現した話就活セミナーの様子 写真:井上敬仁

月の家賃4万~6万円のアパートといえども、昨今はしゃれた間取りや充実した設備のある物件でないと、なかなか入居者が付かないという。「大家業の設備投資には苦労も多い。しかも頑張った割に、ハード面で近隣の物件と差別化することは難しい」「強みになるのは大家のスキルと人間力。実は私、あることをして家賃の値上げに成功したんです」と自らもアパート経営する一芸物件専門家の井上敬仁氏。その秘策を開陳しよう。(一芸物件専門家/キャリアコンサルタント 井上敬仁)

※この記事は井上敬仁『高い家賃なのにいつも満室になる人気物件のつくり方 一芸物件』(アスコム)の一部を抜粋し、大幅に加筆・再編集したものです。

「これでもか!」というぐらい
設備の充実を図ってきたが……

 昭和のアパートといえば、6畳1間に小さなキッチン、狭いトイレとバランス釜の風呂というのが定番でしたよね。しかし、昨今のアパートはロフトや地下収納庫などの間取りの工夫に加え、最新の設備が整っていないとなかなかお客様の心をつかむことができません。

 かくいう私も凝り性なほうで、新築するアパートはどこにも負けない充実した物件に仕上げてきました。例えば、玄関の鍵には暗証番号を押すだけのテンキーロック(電子キー)を採用し、キッチンにはIHクッキングヒーター(2口以上)を、風呂場には浴室乾燥機を、居室にはAIスピーカーを、1階の部屋には電動シャッターを装備しています。

 さらにインターネット無料サービスや、家にいなくても電灯やエアコンが操作できるIoT(Internet of Things)、宅配ロッカーなども用意しています。おかげでお客様からの引き合いは多く、どの物件も満室経営をつづけていますが、ここ何年か、ずっと消えない悩みがありました。「このあと、どうしよう?」というものです。できることはやり尽くした感があったのです。

 ハード面はよその大家さんもがんばっていますから、それだけで他の物件と差別化するのは難しいものです。また、間取りや設備の新しさでは、次々とできてくる新築物件にかないません。

 それで、「今度はソフト面でなにかできるのではないか?」と思うのですが、アイデアが浮かばず、閉塞感が高まるばかりだったのです。

 しかし、ある出来事をきっかけに、私はこの閉塞感から抜け出すことができました。