2022年現在、全国の賃貸物件の平均空室率は21%、一番人口が密集する東京都の空室率は14.5%です。しかし、そんな厳しい賃貸市場の中にも、空室知らずの賃貸物件があることをご存じでしょうか?もちろん、「都心の便利な立地なのに、家賃が手ごろな物件」のことではありません。
そうではなく…。
都心から100分の立地なのに空室知らず。
築年数40年以上なのに空室知らず。
間取りや設備にはこれといった特長はないのに空室知らず。
北関東の郊外で家賃20万円超なのに空室知らず。
こんなふうに、客観的にはけっして有利な条件とはいえないのに、お客様にひっぱりだこの物件が存在しているのです。中には、空くのを待っている人々が何人も順番待ちをしている物件もあります。
どんな物件なのか、気になりますよね。そもそも、そこにはどんな魔法が効いているのでしょうか?
いいえ、それは魔法ではありません。大家さんの見事なひらめきと、それをなんとか実現しようという叡智と努力、そして、住む人を「驚かせたい、楽しませたい、幸せにしたい」という情熱が、唯一無二の人気物件を誕生させているのです。
それを私は“一芸物件”と呼んでいます。
一芸に秀でるといいますが、たった一つ、強力な個性があれば、その物件にはお客様を強く惹きつける力が生まれるのです。
たとえば…。
就職の内定がスムーズに取れる学生向けアパート。
ジョン・ポール・ジョージ・リンゴがいつもそばにいるビートルズ・アパート。
ドラマの聖地めぐりどころか聖地に住んでしまえるロケ地アパート。
その一芸のために特別な設備をそれなりの費用をかけて導入する例もありますが、一方にはお金をほとんど使わずに実現できる一芸物件があることもすごいところだと思います。建築当初は普通の物件で、その後も間取りや設備をいじることはなく、アイデアをあとづけしただけで一芸物件に変身した例もあるほどです。
一芸物件はアイデア次第。ふと浮かんだ思いつきから、大化けすることもあるのです。
本書では多くの一芸物件をご紹介するとともに、自分だけの一芸の見つけ方や、実際に一芸物件をつくるための考え方・方法などをご紹介していきます。