人の上に立つと、やるべき仕事や責任が格段に増える。メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理など、プレーヤー時代とは異なるタスクが多く発生し、はじめは「何から手をつければいいのだろう…」「やるべきことが多すぎないか…」と戸惑ってしまうだろう。
そんな悩めるリーダーたちにおすすめの書籍が、株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏の著書『リーダーの仮面』だ。本書では、「若手リーダーに向けてマネジメントをするときには、仮面をかぶるのがコツだ」というメッセージをわかりやすく説く。(初出:2020/12/14)
「リーダー失格」の行動とは何か
職場の人間関係で悩む人は多くいます。
しかし、識学の考え方の中に「人間関係」という概念はありません。
上司は上司の役割をし、部下は部下の役割をする。ルールに則って規則正しく動く。ただ、それだけです。そこに余計な感情は発生しません。だから、精神的に疲れることはないのです。
感情で動いている組織では、リーダーが部下に好かれようとします。逆に部下もリーダーに好かれようとします。
すると、「人間関係」の問題が出てくるので、疲れてしまうのです。
「上司が好きだから言うことを聞く」
そんな状況は、一見、聞こえがいいように思えます。
しかし、ひっくり返すと、
「上司が好きじゃなくなったから言うことは聞かない」
ということを許すことになってしまいます。
好き嫌いが、上司の指示を聞くか聞かないかのバロメーターになってしまう。そんな状況は絶対につくってはいけません。
正しくルールを言語化して運営されている組織では、業務上で感情的になることはありません。その結果、人間関係の悩みもなくなります。
では、「ガチガチにルールだらけの会社はどうなのでしょうか?」
そう聞かれることも多いです。私はそれでも、ルールがないよりはずっとマシだと言っています。
大事なのは、ルールがないことによるストレスから部下たちを自由にすることなのです。
チームにとっての「要注意人物」
チームや組織にとって注意すべきことがあります。
それが、「コミュニティの外側に出てしまっている人」の存在です。
「うちの会社って、スピード感がないところがダメだよね」
「自分がいなきゃ、うちの会社は回らないよなぁ」
このように、評論家のような立場になったり、個人の力を過信しているような人たちが、あなたの会社にいないでしょうか?
彼らの言動や行動を正していくのも、リーダーの重要な役割です。
どうすれば、彼らはコミュニティへの帰属意識を持つのでしょうか。そこで必要になってくることこそが、「ルールを守らせること」です。
「姿勢のルール」を設定し、守らせるのです。
それでも、「私はそのルールは守りません」と反発する人は、その組織、あるいは会社には合わない人なのだと、識学では考えます。
とはいえ、もちろんリーダーには、辞めさせる権限はありません。人事権は経営者に任せ、リーダーは、とにかく感情で動かそうとせず、ルールを守らせることだけに集中します。
ルールを守らない人がいた場合でも、その人だけを特別扱いしてはいけません。
「好かれたい」「いい人に思われたい」という感情はグッと抑え、リーダーの仮面をかぶるのです。
これは、ある飲食店のエリアマネジャーの話です。
中途入社でマネジャーとして入ったのですが、売上の数字がなかなか上がらなかったそうです。
彼は中途入社であることに負い目を感じ、「現場とのコミュニケーション不足で会社にとけ込めないのが原因だ」と勘違いをしていました。
つまり、「売上の問題」を「コミュニケーション不足」という他の問題にすり替えていたのです。
こういった場面でも、やることは同じです。
ルールを設定し、ルールどおりに動いているかどうかだけに集中してマネジメントするのです。
そうすることで、目の前の人間関係の問題を考えなくなり、メンバーたちが迷わずに業務を遂行するようになります。
その結果、彼はエリアマネジャーの中でトップの成績を出すようになったそうです。
このように、コミュニティへの帰属意識を素早く築き、早く結果を出すために、ルールの設定にフォーカスすることは有効なのです。
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2023年8月現在、約3500社の導入実績がある。
主な著書に『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』(ダイヤモンド社)などがある。