2023年10月からインボイス制度が始まります。「増税ではないか?」「経理の手間が増え、負担が増大する」など、さまざまな意見が出ています。そのインボイス制度の影響を強く受けるのが「ひとり社長」です。しかし、業種・業態・売上規模によっては、「インボイスに登録しないほうがいい」と提案できるケースもあり、戦略的な選択が求められる制度ともいえるのです。
本連載は、経費精算から決算・申告まで、ひとり社長の経理の基本を学ぶものです。著者は、税理士の井ノ上陽一氏。インボイス制度、電子帳簿保存法に完全対応の『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』の著者でもあります(発売は8月2日)。「ひとり社長なら、経理はこれだけでいい!」とポイントをおさえた1冊になっています。

【インボイス】免税事業者の「絶対NG行動」ワースト1Photo: Adobe Stock

免税事業者にとても多い勘違い

「今は免税事業者ですが、来年は課税事業者になります。この場合、インボイスに登録しなくても問題ないでしょうか?」

 こうした質問を多くいただきます。答えはNOです。

 たとえば、12月決算で、今期(2023年1月1日から2023年12月31日)は免税事業者で、2024年1月1日から消費税の課税事業者になるとします。

 この場合、2023年9月に請求書を出すなら、11万円(消費税1万円)で請求ができます。しかし2023年10月時点では、インボイスに登録していない免税事業者です。

 11万円(消費税1万円)で請求できないことはありませんが、お客様からは、「インボイスに登録していないのに、なぜ消費税?」と思われ、問い合わせがくる可能性があります。

 免税事業者でインボイス登録をしないなら、11万円+消費税0円、または11万円(税抜)としたほうが揉めごとは少なくなるでしょう。

 2024年1月に課税事業者となった場合、インボイス前であれば、11万円(消費税1万円)で請求しても問題ありませんでした。

 しかしインボイス後は、課税事業者であってもインボイスの番号が必要なのです。前述の例と同様に、「インボイスに登録していないのに、なぜ消費税?」と思われてしまうでしょう。

 インボイスの番号は、いわば「課税事業者である証明」でもあるのです。登録番号がない請求書ではお客様が困る場合があります(消費税の負担が増える)。消費税を納めるのならインボイスに登録しない理由はありません。経理を効率化していきましょう。

(本原稿は井ノ上陽一著『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』から一部抜粋・追加加筆したものです)