韓国で長く読まれている勉強の本がある。日雇い労働をしながら4浪の末、ソウル大学に首席で合格した『勉強が一番、簡単でした』(70万部)。韓国では「受験の神」と称され、勉強に携わるもので、その名を知らない人はいない。日雇い労働者からソウル大学首席合格者になるまで、人生の大逆転を成し遂げた実話。読後、モチベーションが高まり、勉強したくなる自分に驚くはず。超ロングセラー本た『勉強が一番、簡単でした』から、その驚くべき内容を紹介する。
今回は、本書の訳者である吉川南氏にインタビュー。吉川南氏とコンビを組んだ『勉強が面白くなる瞬間』は10万部を超えるベストセラー。今作でも翻訳をお願いし、著者の魅力が存分に伝わるた『勉強が一番、簡単でした』が誕生、この本の魅力をうかがった。
人生の突破口として、勉強に向かう
――そして、2冊目となる『勉強が一番、簡単でした』。韓国では知らない人がいないくらいの大ベストセラー。日本人にどう読んでほしいと訳されたのですか?
著者のチャン・スンス氏は家計を支えながら4浪の末、ソウル大学に首席で合格したことでニュースになったほどの人物。そして、本が出た。知名度がないところで、どう売れるかは楽しみです。
日本人にも読まれると思いますが、理由として、前回紹介した『勉強が面白くなる瞬間』にも共通していること。「自分はここまでなんだ」と限界を感じている人が多いと思いますが、この本でも「そうではないんだよ」と、訴えかけてきます。
「夢とはいくらもっていいんだ!」
「夢を持つことは『自由』だし、『権利』なんだ」
夢をつぶすことなく、そこを目指すためにどうすればいいのか、それがこの本の一番のポイントです。
達成できるかは、運もあるかもしれないが、目指さないことには絶対に実現できない。夢に向かって、モチベーションを持ち続ける。第一歩をどう踏み出すか……。
それが、著者が言いたいことなのかな、と。
――著者の非行的な部分をカットするかは悩みましたが、とても魅力ある人物に映りました。
じつは、こういう人がいることは知っていたのですが、まさかここまでのワルをしていたとは……。ケンカとアルバイトの繰り返しで、かなりびっくりしました。「え、このあと、どうなっちゃうんだろう」と。
ケンカばかりの生活ですが、彼なりの大義があるんですよね。ワルのためにワルをするではなく、自分のなかの存在意義をつぶされないように、立ち上がる。そのきっかけがケンカでした……。
彼のモチベーションの高さは家の貧しさにありました。父を早くに亡くし、女手一つで育てられるものの、母親は失敗つづきの人生。そのなかで、どう生きるべきか。高校生なりに考えたと思います。
最終的に、人生の突破口として、勉強に向かうわけです。
――高校のときに、あのような境遇の中で、「家」のために、「家族」のために、「自分の人生」のために、あのように考えられるのは素晴らしいです。腐らず、よく生きてくれたなと思いますよね。
日雇いの仕事をしながら、このままじゃいけないと思って勉強を始める。その考え方がオトナだったなと。「いい大学に入ろうよ」という話じゃなくて、そこを乗り切らないと、自分の人生が終わる、そんな切迫感。突破口としての道具が勉強というのは、説得力がありましたね。
ーー『勉強が一番、簡単でした』、いちばんの読みどころはどこでしょうか?
エピソードとして、頭に残ったのは、「ピタゴラスの定理」がでてきたところ。自分は一生懸命、数学を勉強していたのに、工事現場のおじさんが「こんなの簡単だよ」と説明する話。どこにでも、頭のいい人はいるんだと気付かされましたね。
著者は、「頭のいい人」ではなくて、「地頭のいい人」だったのかもしれません。知識を詰めこめばいいというものではなく、論理的な思考力、筋道立てて考えられる人。コミュニケーション能力が高い人なのかな、とも感じました。
なので、いったん目標決めると、全労力を注ぎ込める。どうすれば達成できるかを自分で組み立てながら、そのノウハウも自分で組み立てる。
数学は暗算。物理は実験と、自分で編み出し、組み立てられるのはすごいですね。
――いいところはどんどん吸収していく姿勢もすばらしいですよね。
(取材・構成/編集部 武井康一郎)
(本原稿は70万部のベストセラー『勉強が一番、簡単でした 読んだら誰でも勉強したくなる勉強法』をベースにしたインタビュー記事です)