総予測20262025年10月の第1回日米首脳会談は“顔見世興行”にすぎなかった Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

第2次トランプ政権の勢いは、容易には止められない。26年も世界が振り回されるのは間違いなく、同盟国である日本にとって米国は「パートナー」ではなく「ボス」という関係になっている。特集『総予測2026』の本稿では、こうした中で日本はどう振る舞うべきかを探る。(東京大学東洋文化研究所教授 佐橋 亮)

「司法判断」と「議会」は
“本気”のトランプ政権を止められるか

 第2次トランプ政権は、第1次とは異なり、4年間の“雌伏”の期間に綿密な準備を進めてきた「本気の政権」といえる。

 その象徴が、米保守系シンクタンク・ヘリテージ財団が2023年4月に公表した政策提言集「プロジェクト2025」だ。これは第2次トランプ政権における政策運営の青写真ともいえるものであり、その中には、三権分立の均衡を揺るがしかねない「単一執行府論」が含まれている。大統領権限の拡大と、司法・立法・規制機関などの監視・抑制機能の弱体化を意図した内容だ。

 25年1月20日の米大統領就任以降、万全の準備を整えたトランプ政権の勢いは、容易に止められないという現実を、われわれは1年で認識するに至った。

 26年において、この勢いを阻止し得る可能性があるとすれば、まずは「司法判断」と「議会」の二つとなるが、制約は多い。

 前者では、関税の根拠としてIEEPA(国際緊急経済権限法)などが司法の判断対象となる見込みだ。関税に関しては夏前までに案外、トランプ政権に不利な判断がなされる可能性がある。しかし連邦最高裁判所は依然として保守派優位の構成で、これ以外のテーマでは共和党に有利な状況のままだ。

 議会による抑制にも限界がある。26年には中間選挙が控えるが、民主党が上院を奪還する可能性は低い。下院には中間選挙で現職が不利になる傾向があり、民主党が多数派となる可能性はあるものの、下院だけではトランプ政権を止めるには力不足だ。「トリプルレッド」(共和党が大統領職と上下両院を支配する状態)の崩壊が仮に起きても、それは抵抗勢力としての役割を果たす程度にとどまり、勢いを根本から止める力とはならない。

次ページでは、26年も続くであろう、トランプ政権の米国の利益を追求する「米国本土防衛」と「米国ファースト外交」について、その本質を掘り下げる。じつはトランプ氏は個人的になにか大きな世界ビジョンを持っているわけでなく、必ずしも強硬な保守主義者ではないと、筆者は解説する。トランプ氏を動かす極めて個人的な「3つの動機」とは?