「勉強を続けられる人」と「途中で諦めてしまう人」の差は、どこで生まれるのだろうか。
受験大国・韓国で社会現象になった50万部のベストセラー『勉強が面白くなる瞬間』著者・パク・ソンヒョクは、「モチベーションを保つためのカギは『心』の整え方にある」と語る。彼は、塾さえない環境で周囲より遅れて勉強を始めたが、「心」を鍛えれば環境や頭脳は何の問題にもならないと固く信じて勉強。その結果、韓国トップのソウル大学法学部をはじめ、延世(ヨンセ)大学経営学部、東新(トンシン)大学韓医学部にも同時合格するという快挙を達成した。
学生の98.4%がこの本を読んで「勉強をしたくなった」と証言したという本書。なぜ、勉強をしなかった人たちが勉強に夢中になるのか? 勉強の本質とは何か? 本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、「勉強が苦しくてたまらない時期を乗り越える方法」を紹介する。(構成:川代紗生)

勉強が面白くなる瞬間Photo: Adobe Stock

EXO・カイの過酷な下積み時代

 受験大国・韓国で社会現象を起こした大ベストセラー『勉強が面白くなる瞬間』では、韓国で大人気の男性アイドルグループ「EXO(エクソ)」のメンバー、カイのストイックなエピソードが紹介されている。

正月に練習生仲間が自宅に帰っても、自分だけ残り、誰もいない練習室で3日間の休みの間、食事時間を除きダンスの練習に打ち込みました。ふだんの日も朝一番で練習室に行き、鏡を相手に1日中ダンスを研究しました。動きを一つずつ分解し、こうした方がいいか、ああした方がいいかとディテールを少しずつ変えながら試すのです。僕はうまくなろうとする努力を、一度もやめたことはありませんでした。当時、僕より遅くまで練習室に残っている練習生は一人もいませんでした。夜が明けるまで練習を続けたこともあるほどです。(P.137-138)

 本書では、カイ以外にも、強靭な精神力を持つバスケットボール選手、マイケル・ジョーダンや、「執筆に集中するため、刑務所のような檻に自分を閉じ込めた」という韓国の小説家、イ・ウェスなど、著名人のエピソードが多数紹介されている。

 著者がこのような事例を挙げた理由は何か?

 それは、他人と比べてしまう「心のクセ」をなくすためだ。

長期戦突破のカギは「モチベーター」を持つこと

 あの人の方が成績がいい。
 あの人の方が努力している。
 あの人の方は合格できそうだが、自分はきっと無理だ。

 目標を達成したいのに、ついライバルと比較して落ち込んでしまうことは多々ある。

「ライバルと競争するのはやめて、自分にできることをコツコツやろう」と決意しても、簡単に心は変えられない。一瞬で気持ちを切り替えられるほど、心は簡単ではない。

 そんなときのヒントとして、「心の中にモチベーターを持つ」という方法が紹介されている。

自分と競争するときは、自分をダメにする「ライバル」を持つよりも、心の中に「モチベーター(Motivator)」を持ちましょう。「モチベーター」とは、その人の生きざまを通じて、それを見守る人の心に情熱を花咲かせてくれる人のことです。
それは彼ら自身、自分との孤独な戦いに勝利を収めた人たちだからです。
心の中にライバルを持つと、常に相手が持つ「条件」に目がいってしまいますが、モチベーターを持てば、彼らの「人生に対する態度」が見えます。(P.136)

「比べてしまう」という心のクセを取り除くこと自体が難しいのなら、比較対象を「すでに戦いを乗り越えた憧れの人」に変えてしまおう。

 本書の著者も、勉強に全力で取り組もうと決心したきっかけは、最高のモチベーターに出会ったことだという。

 著名人、家族、知人……。目を閉じて思い浮かべたとき、心がもっとも熱くなり、孤独に打ち勝つ勇気をくれる人は誰だろうか。その人を、あなたのモチベーターにしてみよう。

「続けられる人」と「続けられない人」の決定的な違い

 目標を達成するまで勉強を続けられる人、途中で挫折する人。

 本書では、その決定的な違いは、「勉強が面白くなるまでには、学習初期特有の『つまらなくて退屈な段階』がある」と知っているかどうかだと書かれている。

 勉強をはじめたばかりの頃は、当然、何も理解できない。わからないところがどこなのかもわからない。

 たとえば歴史の教科書をはじめて読むとき、見たこともない専門用語や人物名ばかりで、頭が混乱するはずだ。

 全体の流れもわからないままひたすら暗記するしかないので、当然、一度目を通しただけではテストで満点をとれない。

 頭の中に知識が染み込むまで時間がかかる。暗記しても数日経てばすぐに忘れてしまうので、面白みもない。

 それは当たり前のことであり、なんでも初めからうまくいくわけではない。学習初期の退屈で苦しい期間を乗り越え、ある程度の知識が身についてようやく、本当の面白さに気づけるものだ。

ただ、「敗者」は退屈でつまらない時間が永遠に続くと勘違いします。実際の苦労よりずっと恐ろしい怪物を頭の中に想像してしまい、見る前から怖がるからです。(中略)結局、勉強の山場を前にして逃げ出してしまいます。こうして初めての内容を学ぶ段階で、退屈でつまらない作業に耐えられず、ライバルの70%が脱落していきます。(P.113-114)

 目標達成できる人は「退屈な段階」を耐え抜き、コツコツと地道に努力を続けられる。ここで粘れるかどうかが、結果の差につながるのだ。

 この苦しい期間を乗り越えるためにも、心の中に「モチベーター」を持とう。身近なライバルと点数を競い合っていては、苦しい時間が余計に苦しくなるだけだ。

「あの人にだって下積み時代はあった」と思えるような人に励ましてもらおう。

 そうして目標を達成した暁には、少しは憧れの人に近づけたと自信を持てるはずだ。