景気沈滞が続き、地獄のような韓国社会を表す「ヘル・コリア」という言葉が生まれた。こうした中、「第二のアメリカン・ドリーム」を夢見て、韓国を離れる人が増えだした。「親の世代までは『今は厳しくても、より良い明日がある』という希望があったが、自分の能力、努力への適切な見返りを受けるのが難しい時代」という意味で「ヘル・コリア」ということが言われるようになったのだ。
韓国社会が妊娠・出産・子育てに適していないという認識は、さらに海外への移住を増やした。少子化問題が移民の主な理由だと話したヘンリさんは「競争しながら激しく生きてきたが、今の若者世代は生涯働いても家も買えない生活を送っている」と述べている。
統計庁によると、過去3年間の韓国の主観的生活満足度は10点満点で5.9であり、OECD加盟国のうち最下位圏である。韓国ギャラップのアンケート調査によると、回答者のうち、「要件が満たされれば他国で暮らしたい」と回答したのは34%で、30代では半分近い46%に上った。
米国移民を準備中のソン・ロク氏は「韓国社会は少々頑張ったところで生活の質を高めるのが難しい社会」「ストレスが多い職場生活、年齢のプレッシャー、特異な人に向けられる社会的視線など、不必要なストレスを受けて暮らしたくない」と述べている。
韓国人は激しい競争に耐えて大学に進学する。韓国では大学の学位取得者は70%でOECD加盟国中最も高い。しかし、いい大学を出ても、社会的な支持基盤を持たない人は、いい就職口を見つけられない。就職できても、職場でふるいにかけられ、早期退職のリスクと背中合わせである。退職すれば、年金も十分でないので、より条件の悪いところで再就職せざるを得ない。
こうした社会の中で満足感を味わえるのは、ほんの一握りの人々である。韓国で主流から外れた人は、自暴自棄になるか海外に逃避するかという事態が起きているのが現在の姿である。
満足いく職場を
見つけられない若者たち
韓国の5月時点の失業率は、2.5%で、1996年6月の統計開始以来の低水準である。ただ、製造業ではなお雇用の弱さが続いている。
韓国で失業率が低くても、日本のJETROは韓国の雇用問題が深刻であると分析し、その主な理由として3点挙げている。