多くの人々にとって、不動産は最大の資産である。韓国ではソウルの住宅価格が、文在寅政権時代に2倍へと跳ね上がった。その結果、持てる者と持たざる者の二分化が進んだ。その一方で、政権中枢や関連業者の利権と結びついた不正が行われていた。
文在寅政権となった2017年以降に建てられた韓国土地住宅公社(LH)発注マンションで、使用された鉄筋が不足していたことが問題となっている。
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LHは鉄筋不足の15団地の設計・施工・監理関連業者と関係者の捜査を警察に依頼した。設計から監理までの建設工事の全過程で発生しうる天下り、利権介入、不正、腐敗行為などを監視する「反カルテル構成建設推進本部」を設置することにした。
また、韓国政府は鉄筋不足の点検対象を、2017年以降に竣工したフラットスラブ構造(鉄筋コンクリートスラブが梁の仲介なく直接柱に緊結され、スラブから直接柱に力を伝える床構造)の全国の民間マンション293カ所に拡大した。一部民間マンションは住居棟にも梁がなく、柱の上にスラブを載せるフラットスラブ構造を採択したという。
欠陥工事が相次いだ根本原因として、「建設業者の利権カルテル」が指摘されている。
韓国では、一部の人々のみが、国民を犠牲に利権をむさぼる構造になっている。こうした不公平に対する不満が、一部の若者の行動を攻撃的にさせていると言える。そうした行動の広がりを真剣に受け止め、政治の責任で不公平、不公正の解消に乗り出す以外、韓国の未来はないだろう。
(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)